研究実績の概要 |
小児肺静脈狭窄部のHematoxylin & Eosin染色とMasson’s Trichrome染色での内膜厚を測定し、免疫染色はαSMA、Collagen I,III、Desminを行った。内膜壁厚は総肺静脈還流異常術後症例が非術後症例に比べ周囲に大きかった。総肺静脈還流異常修復術後1で内膜内にSMA陽性細胞の増殖を認め、非術後例に内膜内にSMA陽性細胞の増殖を認めた。内膜内にDesmin陽性の成熟した平滑筋細胞の増殖を認め、内膜内に膠原線維の豊富な古い線維化を認めた。 肺静脈狭窄病変(PVS)の病理組織学的変化の主体は肺静脈内膜の高度肥厚であり、免疫組織染色では平滑筋細胞及び線維芽細胞への分化能を有するαSMA陽性の筋線維芽細胞が肥厚内膜内での細胞増殖の主因であることが確認された。一部の症例ではDesmin陽性の成熟した平滑筋細胞や、Collagen-III 陽性の膠原線維の増殖も認め、経時的な血管修復過程であることが推測された。 位相差X線CTにおいて肺静脈‐心房接合部の観察を行い血管平滑筋と心房平滑筋の接合様式を確認した。肺静脈狭窄部の標本に関しては断片化したもので上記の免疫染色との比較を行ったが、組織増殖部位での各種細胞増殖(SMA,Desmin)及びcollagen IIIと相関する所見は得られなかった。 肺静脈狭窄還流血の血流解析として、術中の経食道心臓超音波検査を用いてVerocity Time Index of Pulmonary Vein (PV-VTI)の測定を行った。肺動脈絞扼術や体肺動脈短絡術などの先天性心疾患手術の際の術中肺血流変化によく相関し、肺血流の指標として有用であることを論文報告した。また、両方向性グレン手術やフォンタン手術などの右心バイパス手術におけるそれぞれのPV-VTIの術中変化のパターンについても解析し学会報告を行った。
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