重症下肢虚血に対して細胞移植治療の研究が実施されており、臨床研究では自家細胞移植が実施されているが、期待されているほど、高い治療効果が得られていないのが現状である。その理由の一つとして、細胞移植治療の研究対象として用いられる重症下肢虚血モデルとなるマウスは若く健康な為、そのような重症下肢虚血モデルに対しては、細胞移植治療は高い効果を導くが、このような重症下肢虚血モデルは、実際の患者の状態を反映していないことが示唆される。 そのため、我々は、細胞移植の対象となる動物モデルが、患者の重症下肢虚血と似た病態となることを目標に、重症下肢虚血モデルの作製を行った。 我々は、これまでにアポE欠損高脂血症マウスの左大腿動脈結紮モデルによる解析を実施しているが、今回は、加齢によるアポE欠損高脂血症マウスの下肢の血管を評価することで、重症下肢虚血モデルになりうるか検討した。 アポE欠損高脂血症マウスを13ヵ月齢、17ヵ月齢、22ヵ月齢まで飼育して下肢の切片を作製し、血管の状態を、HEおよびマッソントリクローム染色せ評価した。アポE欠損高脂血症マウスと同じ背景である正常なマウスも13ヵ月齢、17ヵ月齢、22ヵ月齢まで飼育して、対照群とした。13ヵ月齢および17ヵ月齢のアポE欠損高脂血症マウスでは、約80%のマウスで血管の異常が観察され、22ヵ月齢のアポE欠損高脂血症マウスでは、全てのマウスで血管の異常が観察されたが、13ヵ月齢、17ヵ月齢、22ヵ月齢の正常なマウスでは、アポE欠損高脂血症マウスで観察されたような血管の異常は観察されなかった。
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