血行再建を要する先天性心疾患に対する代表的な手術手技として、肺動脈閉鎖もしくは狭窄に対する肺動脈の再建術と大動脈弓離断もしく縮窄に対する大動脈再建術が挙げられる。これらの疾患群では新生児期から乳児期に血行再建術を要することが多く、技術的にも困難で、成長に伴う再狭窄による再手術を余儀なくされる症例がある。本研究では、術前後の大動脈弓や肺動脈での血流動態を評価し、乱流などのもたらすエネルギー損失を計算した上で、理想的な形態での血行再建術法を解明し、さらには再手術適応基準を明確にすることで生命・生活予後を改善する外科的治療法を確立することを目的としている。まずは、左心低形成症候群および肺動脈弁閉鎖・心室中隔欠損・主要体肺動脈側副血行路術後患者での血流解析手法の確立を目標とした。 最終年度としてはA)左心低形成症候群および段階的手術を選択した肺動脈弁閉鎖・心室中隔欠損・主要体肺動脈側副血行路それぞれ10例ずつを29年度、30年度の結果を基に血流解析を行った。B)左心低形成症候群ではNorwood手術を、肺動脈弁閉鎖・心室中隔欠損・主要体肺動脈側副血行路では肺動脈統合化手術および右室流出路再建術を従来の各手術術式を比較検討し、最適な血流効率が獲得可能な手術術式を検討し、手術術式の標準化を図った。C)左心低形成症候群で大動脈に再手術を要した症例に対し術前後を比較し再手術適応基準、手術介入時期、手術法を明確にした。D)肺動脈弁閉鎖・心室中隔欠損・主要体肺動脈側副血行路で遺残病変の評価と手術介入の是非につき検討した。
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