研究実績の概要 |
心臓再生医療における主たる目標は、心筋梗塞発症後にいかにして心筋細胞の修復を増強させ、心不全患者の心機能を維持することである。心筋梗塞による組織障害を最小限にとどめ、心線維芽細胞による適切な心臓修復を促進させることにより予後の改善を図ることが重要と考えられてきている。本研究の目的は心筋梗塞発症後の心筋細胞及び線維芽細胞の障害を最小限に留め、細胞死と細胞老化を抑制することで心筋梗塞の予後を改善する新たな治療法を開発することである。本年度に得られた結果は以下の3点である。 1.マウス心筋梗塞モデルにおける細胞障害の評価:心筋梗塞発症後のマウス心臓の組織切片を観察すると、心筋梗塞発症後に線維芽細胞が集積し、膠原線維の生成により梗塞領域の組織修復が行われていた。しかしながら、組織修復のために梗塞領域に集積した心線維芽細胞は障害を受けていることを確認した。 2.障害を受けた線維芽細胞の救済を担う分泌蛋白を特定:正常心筋及び心筋梗塞発症後のマウス心臓からマクロファージをFACSで単離した。マイクロアレイ法によりマクロファージの遺伝子発現の違いを2群間で網羅的に解析し、組織修復分子メカニズム及びシグナル伝達経路に関与する遺伝子の特定を行った。 3.In vitroでマクロファージによる線維芽細胞救済を評価:正常心筋及から線維芽細胞を回収し、1. 健常な線維芽細胞, 2. DNA障害を与えた線維芽細胞, 3. マクロファージと共培養したDNA障害を与えた線維芽細胞、4. マクロファージと共培養したDNA障害を与えた線維芽細胞に実験2で特定したタンパク質の中和抗体を加えた4群を作成した。線維芽細胞のアポトーシス、遊走、細胞分裂及び活性化を免疫染色で評価した。
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