心筋梗塞発症後の心臓における炎症を炎症性サイトカインの発現量で評価したところ慢性期においても炎症が続いており、組織修復のために梗塞領域に集積した 心線維芽細胞は炎症による障害を受け、老化を起こしていることが確認できた。さらに、予備実験でin vitroの心線維芽細胞DNA障害モデルを確立し、 M2マクロ ファージと共培養したところ、興味深いことにM2マクロファージが障害を受けた心線維芽細胞に対して、液性因子を介して細胞死と細胞老化を抑制し、増殖性を 保つ役割を果たすことがわかった。慢性心不全の進行における心線維芽細胞の異常の積極的関与も指摘されていることを考慮すれば、M2マクロファージが分泌す る責任因子を同定することは、治療戦略上、極めて重要であると推測された。そこで、正常心筋及び心筋梗塞発症後の心臓からM2マクロファージを単離し、マイクロアレイ法により遺伝子発現の違いを2群間で解析し、心筋梗塞発症後のM2マクロファージで特異的に高発現する分泌蛋白遺伝子の中から特定の蛋白質を選別した。 特定の分泌蛋白の中和抗体を用い、マウスの心筋梗塞モデルを用いて、障害を受けた線維芽細胞の細胞老化抑制・細胞増殖に関与するシグナル伝達経路が活性制御されているかをqRT-PCRによる遺伝子発現解析で検証した。次にIn vitroでM2型マクロファージが分泌する蛋白が線維芽細胞の老化抑制・組織修復に関与する ことを証明するため、in vitroでの実験を計画した。線維芽細胞の老化、遊走、細胞分裂を免疫染色で評価し、さらに各グループの線維芽細胞からRNAを抽出 し、老化抑制・組織修復に関連する遺伝子の発現量を測定し、M2型マクロファージが障害を受けた線維芽細胞の細胞老化制御に関与する可能性があることを明らかにした。
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