研究課題/領域番号 |
17K10743
|
研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
大沼 健太郎 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師(移行) (50527992)
|
研究分担者 |
住倉 博仁 東京電機大学, 理工学部, 助教 (20433998)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 人工心臓 / 駆動制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、想定されない状態変化に対応して自己調節的に適当な血液ポンプ駆動状態を維持可能な制御システムの開発を目的としている。本年度は、(1)必要最小限の入力情報から自律適応的駆動を得るためのアルゴリズムの発展、(2)臨床的有効性が期待される様々なVAD駆動法への応用可能性の探索、を主な課題として以下を実施した。 (1)装置側指標(駆動電流)のみを入力指標に用いてVADの駆動に適応性を取り入れることが可能か検討を行った。まず、遠心血液ポンプを駆動可能なモータドライバおよびコントローラを作製し、ノイズにより目的関数の準最適解を探索するアルゴリズムを実装した。また、ポンプ駆動用DCブラシレスモータのコイル電流の波高値が適当な範囲にあるまたは、その範囲に近づく場合に高値となる評価関数を設定することで自己調節的挙動を企図した。構築したシステムの挙動を確認するため,ポンプ流入側に不意の外乱として吸い付きを生じる機構を備えた一巡閉鎖の模擬循環回路で駆動試験を行ったところ、単に駆動電流のみを指標として、不意の外乱を生じた際に負荷側の情報や厳密な行動則によらずに自己調節的に初期状態を回復する動作が得られた。 (2)さまざまなVAD制御法への応用可能性を検討するための準心拍同期駆動アルゴリズムを構築した。連続流ポンプを任意の拍動数、収縮期比で拍動駆動可能な非同期拍動モードを拡張し、駆動電流の微分値および分散から平坦性を評価することで、およその拡張期補助駆動を期待している。現在まで、単発の負荷変動を与えて基礎検討を行い、意図した動作を確認した。一方、回転数を下げる方向の応答性に課題が認められた。また、およその収縮期補助でどの程度、先行研究に報告されるような冠血流量の変化が生じうるか検討するため電気的等価回路による循環シミュレータを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画に従い、自己調節的駆動および、応用例としての準心拍同期駆動の各要素技術の研究開発を行った。拍動駆動において、血液ポンプの回転数変動の応答性に若干の課題が認められた。また、一部計画を変更し、アルゴルズム構築段階から駆動制御が生体の血行動態に与える影響について一定程度事前に評価可能とするためのPCシミュレータを構築した。
|
今後の研究の推進方策 |
電流値を指標とした適応的駆動アルゴリズムは、左心補助を想定した拍動下模擬循環試験において最適化を図る。拍動駆動応用例のための回転数変動システムは、応答性に課題が認められたため、自作モータドライバのロータ部を再設計して軽量化することで改善を図る。その後、アルゴリズムを統合し、模擬循環試験により動作の妥当性を検証する予定である。並行して、構築した血行動態のPCシミュレータを用い、構築したアルゴリズムが冠血流量をはじめとする生体の血行動態に及ぼす影響を事前に検討を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、制御プログラム作成と基本的動作検証の実施を主とし、モータドライバや制御PCは一部他の研究で使用しているものと共用可能であった。そのため当初予定していた制御システムとして用いるPCの購入を要しなかったため、次年度使用額を生じた。 次年度は、長期連続駆動を含む統合システムによる拍動下評価試験を計画しており、将来的な動物実験での使用も想定し、本システムに専用に組み込むための制御PC購入費および、成果公表を積極的に実施するための費用としてあわせて計上し、更なる研究推進を図る。
|