【目的】下肢虚血症例に対する血行再建治療を実施後、下肢血流保持や術後社会復帰の可否においては、歩行能力が治療予後を左右する。治療前に筋肉機能評価を実施し、下肢血行再建治療後の予後が推測できれば、治療後の管理・観察において有益であると考え、下肢動脈虚血症例における下肢機能予後評価を目的として、下肢筋組織を採取し、筋肉細胞機能を比較し検討した。【方法】下肢虚血症例の下肢筋肉組織を採取し、筋肉細胞活動により発現していると考えられる、IGF-1、YBX3、IL-6、IL-1β、FGF-2の各々の筋肉細胞内の発現比率を比較検討した。下肢血行再建時に筋肉細胞を採取した。発現比率の算出にGAPDHの発現量を用い標準化した。採取した検体数は18検体(12症例)。男性11例、女性1例、平均年齢59.5歳。基礎疾患は閉塞性動脈硬化症9例、下肢急性動脈閉塞2例、閉塞性血栓性血管炎1例で、術前の虚血重症度は、間欠性跛行3例、安静疼痛2例、足部潰瘍6例であった。筋肉採取部位は腓腹筋12例、前脛骨筋3例、大腿四頭筋、縫工筋、後脛骨筋が各1例であった。併存疾患は糖尿病6例、高脂血症4例、慢性腎不全1例であった。全例で自家静脈を用いた下肢バイパス術を実施した。【結果】IGF-1、YBX3、IL-1βでは、性別、年齢、基礎疾患、術前の虚血度、併存疾患において、発現比率に有意差を認めなかった。IL-6では、糖尿病症例(p=0.04004)及び高脂血症例(p=0.0303)で発現比率が高い症例を多く認めた。また、FGF-2では、若年者(p=0.03068) で発現比率が高い症例を多く認めた。【結語】年齢差や併存症の有無によって、筋肉細胞機能に相違があることが確認できた。短期的な下肢機能予後には相違を確認することができなかったが、今後更にフォローアップを継続し中長期での下肢機能予後を再評価する計画である。
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