研究課題/領域番号 |
17K10751
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50456563)
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研究分担者 |
鈴木 優子 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20345812)
浦野 哲盟 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50193967)
佐野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80623842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大動脈瘤 / モデル動物 / 生体イメージング |
研究実績の概要 |
患者検体の解析から大動脈壁の栄養血管であるVasa Vasorum(VV)の変性が、血管壁内の血流異常を引き起こし、腹部大動脈瘤(AAA)の発症・進展に関与することを示唆し、これを基盤に動物モデルを作成して仮説の正当性を証明してきた。(Tanaka H, 2013,2015 PLoS ONE)しかし、これまでの定点観察や2次元の組織解析では、VVの血流変動が大動脈壁の組織変化を惹起する機構の解明には至っていない。本研究では、“生きたまま”組織深層の観察が可能な2光子顕微鏡システムを利用し、当該モデルマウスAAAの瘤壁内におけるVVの血流と、その変動に伴い病態に直結する炎症細胞の動態や低酸素環境の広がりを可視化し、VVの血流変動が、病態の主因である炎症反応をどのように惹起し、これを継続、増幅するか解析している。 昨年度は、2光子顕微鏡による腹部大動脈(瘤)を観察する手法の確立を試みた。各種モデル動物は存在するが、比較的安定した瘤形成をするエラスターゼを用いたマウス大動脈瘤モデルを利用した。観察時の体位や血圧、呼吸等による影響を受けやすいため、観察組織に陰圧をかけて顕微鏡システムに固定させることによって、安定した再現性のある画像観察ができるようになった。さらに、当施設で開発したヒトの病理組織像に類似したモデル動物を利用した腹部大動脈瘤の血管壁の観察を試みている。システムの安定化を成功することによって、今後の定量評価に継続していくことが可能な体制となりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、“生きたまま”組織深層の観察が可能な2光子顕微鏡システムを利用し、当該モデルマウス腹部大動脈瘤(AAA)の瘤壁内における脈管の脈管(VV)の血流と、その変動に伴い病態に直結する炎症細胞の動態や低酸素環境の広がりを可視化し、VVの血流変動が、病態の主因である炎症反応をどのように惹起し、これを継続、増幅するか解析し、AAAの新たな病態機序の解明を目的としている。 昨年度は、2光子顕微鏡による腹部大動脈(瘤)を観察する手法の確立を試みた。各種モデル動物は存在するが、比較的安定した瘤形成をするエラスターゼを用いたマウス大動脈瘤モデルを利用した。観察時の体位や血圧、呼吸等による影響を受けやすいため、観察組織に陰圧をかけて顕微鏡システムに固定させることによって、安定した再現性のある画像観察ができるようになった。研究は、概ね研究計画通りに実施された。
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今後の研究の推進方策 |
1.血流は生きたままの循環動態で観察しなければ、定量は困難である。また、血流の方向性は組織内の流入と流出バランスを測るために重要である。さらに、ドレナージ機構としてリンパ流は欠かせない項目である。 2.炎症細胞の集積は、血流に影響しているのか、あるいは周囲組織からの浸潤によるものが主体であるのか、組織の低酸素がどのように関わるのか?興味深い問題であるが明らかにされていない。 3.VVによる血流変動は、組織内の低酸素環境を引き起こす主因と考えられるが、病理組織像ではさまざまな細胞の増加も顕著である。組織内の酸素レベルに影響を及ぼす因子を、血流・細胞動態から探る。低酸素プローブを利用することによって、血流・細胞動態と同時に低酸素に陥った組織を可視化し、酸素レベルを定量することができる。 過血流、低血流、再灌流など血流動態は常時変動する。その影響を受ける組織変化を明らかにするため、外科的な処置や血管収縮・拡張薬の投与によるVV血流の操作によって、細胞動態と低酸素環境の変化を解析し、VV血流が血管壁の組織環境に能動的に 作用することを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度以降に、大動脈(瘤)壁のVV血流を可視化し、前述したシステムに装備してあるソフトウェア(NIS-Elements、Nikon製)を利用し、大動脈組織内の因子である下記の3点について定量解析する。1.血流量・血流方向(動脈流、静脈流、リンパ流の4次元解析) 2.炎症細胞の動態(炎症細胞の集積機序)3.低酸素環境の広がり(血流不足と細胞増加による影響)
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