研究課題/領域番号 |
17K10752
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 健 浜松医科大学, 医学部, 技術専門員 (20397433)
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研究分担者 |
成 憲武 名古屋大学, 未来社会創造機構(医), 招へい教員 (30378228) [辞退]
田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (50456563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / アディポカイン / 血管周囲脂肪細胞 / 悪玉化 / 炎症細胞 |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤(AAA)は進行性の大動脈疾患であり、最終的に破裂すると高い死亡率に至る。大動脈をはじめとする血管には血管周囲脂肪組織が存在し、そこには多数の脂肪細胞(血管周囲脂肪細胞:perivascular adipocyte: PAC)が含まれる。一方、肥大化した脂肪細胞は炎症性の特徴を有するようになり、悪玉化すると考えられている。我々の研究では、AAAの血管周囲には主にPACに取り込まれた中性脂肪が認められ、さらにAAAの進行に伴いPACのアディポネクチン(ADP)発現の低下や、炎症細胞の浸潤・活性化が観察されたことからAAAのPACは炎症性様に極性変化(悪玉化)していることが予想される。このような背景から、本研究ではAAAの周囲に存在するPAC(大きさ、アディポカイン/アディポカインレセプターの発現変化等)を解析して、AAAの進行に伴うPACの変化を検討した。 浜松医科大学附属病院血管外科及び病理部において採取されたヒトAAAや正常腹部大動脈の病理組織を薄切し、HE染色やPACの変化(悪玉化)に関連する抗体(アディポカインやそのレセプター)を用いた免疫染色による組織学的解析を行った。なお、AAAは非瘤化部、瘤化中間部、瘤化部の3か所に分けて解析し、各染色については画像解析ソフトによる計測も行った。 正常大動脈とAAA病変においてPACが確認されたが、それらの細胞周長はAAAの瘤化部で上昇が見られ、PACの肥大化が示唆された。また、PAI-1やMCP-1発現も瘤化部において増加が認められた。さらに、脂肪細胞自体に発現が見られたADP2型レセプターは、AAAの進行に伴い減少した。一般的にPAI-IやMCP-1は悪玉サイトカインと言われており、本結果や以前の我々の研究結果を総合すると、AAA周囲のPACは悪玉化した脂肪細胞に極性変化している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、ヒトのAAA病理組織を用いた解析は順調に進んでいる。具体的には、AAA周辺における血管脂肪組織の解析や、その血管脂肪組織に対する解析、アディポカイン・アディポカインの受容体の発現細胞などについてである。その一方で、実験動物を用いた研究は若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実験動物を用いたAAAモデル動物の解析に注力し、ヒトの病理組織の解析ともども進めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までにヒト組織の病理学的な解析を中心に行い、その解析に注力し多くは終了した。一方でモデル動物を利用した研究はまだ途中の段階であり、そのモデ ル動物解析に使用する予算の一部が残額として残る形となったため。今後はモデル動物解析に注力し予算を執行する計画である。
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