研究課題
腹部大動脈瘤(AAA)は進行性の大動脈疾患であり、最終的に破裂すると高い死亡率に至る。大動脈をはじめとする血管には血管周囲脂肪組織が存在し、そこには多数の脂肪細胞(血管周囲脂肪細胞:perivascular adipocyte: PAC)が含まれる。前年度までの我々の研究では、このAAA病変のPACは過剰に脂質を取り込んで悪玉化しており、炎症性のサイトカインを高発現していることを見出した。さらにこれらのPACが存在するAAAの外膜領域いおいて、様々な炎症細胞の高度な浸潤が認められた。一方、大動脈をはじめとする血管には血管内血管や血管内リンパ管が存在し、その血管壁における様々な分子や細胞(炎症細胞など)の運搬を担っていると考えられている。我々は、AAA病変におけるその血管内血管の変化についても調べたところ、外膜境界域で血管内血管は巨大化し、血管内皮細胞でアポトーシスが認められ、さらに出血様の病理所見も多数観察されたことから、AAAにおける血管内血管の脆弱化が予想された。これらのことを踏まえ、昨年度はAAAにおける血管内血管の内皮細胞間接着分子について検討した。その結果、。AAAの進行に伴う各細胞間接着分子の発現は、VE-Cadherinでは減少、CD31では増加が認められた。また、Claudinにおいては大きな変化が見られなかった。これらのことから、AAAの血管内血管は脆弱化が示唆され、さらにCD31の発現上昇は白血球の接着・血管外遊走の原因になっていることが考えられ、AAAにおけるさらなる炎症の増悪を引き起こしている可能性が予想された。
3: やや遅れている
本年度はコロナ禍の影響を受け、十分な実験ならびにその成果発表ができなかった。このため研究の進捗状況はやや遅れているという判断に至った。
本年度はコロナ禍の特例措置として、さらなる研究期間の延長を1年間行い、この1年間で研究をまとめ上げ、成果発表に至る予定である。
コロナ禍の影響により、研究や成果発表に支障をきたしたため、計画通りに研究費の執行ができたかったことが理由である。2021年度に研究の完遂とその成果発表を計画している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件)
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