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2018 年度 実施状況報告書

腹部大動脈瘤の成因究明ー動脈瘤壁の瘤化と老化制御遺伝子BubR1の発現との関連ー

研究課題

研究課題/領域番号 17K10760
研究機関九州大学

研究代表者

古山 正  九州大学, 大学病院, 助教 (00419590)

研究分担者 松本 拓也  国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (20374168)
松田 大介  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90780883)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード腹部大動脈瘤 / 細胞周期遺伝子BubR1 / アンギオテンシンII / BubR1L/L-ApoE-/-マウス
研究実績の概要

我々はこれまでに、細胞周期遺伝子BubR1が老化と深く関与していることを報告してきた。さらに、BubR1低下により血管平滑筋細胞とマクロファージの増殖が抑制されることを報告した。大動脈瘤の原因として、加齢性の変化では動脈硬化が顕著であり、内膜への平滑筋細胞、マクロファージの遊走・増殖により、炎症が惹起され血管壁が脆弱化することが知られている。今回、我々は動脈硬化モデルであるApoE欠損(ApoE-/-)マウスを用いて、BubR1の動脈硬化疾患への影響をより反映するBubR1L/L-ApoE-/-マウスを作成した。この BubR1L/L-ApoE-/-マウスの、皮下にinfusion pompを埋め込み、pumpから高濃度アンギオテンシンIIを4週間投与し、腹部大動脈瘤を形成させ、腹部大動脈瘤モデルとした。結果として、BubR1発現低下により、Angiotensin II 由来の腹部大動脈瘤の形成率と死亡率が有意に低下した。形成率はApoE-/-群は5/6 (82%) がAAAを形成したが、BubR1L/L・ApoE-/-群では3/10 (30%) のみであった。また、ApoE-/-群は2/6頭 (33%) が腹部大動脈瘤破裂により死亡したが、BubR1L/L・ApoE-/-群では10頭全て生存した。動脈瘤を形成した個体における大動脈面積は、 BubR1L/L・ApoE-/-群で有意に大きかった。ApoE-/-群では、内膜での粥腫形成が主体であったが、BubR1L/L・ApoE-/-群では中外膜主体の粥腫形成を認め、elastinの破壊は軽度であった。以上よりBubR1発現低下により、elastinの破壊が抑制され、腹部大動脈瘤の形成が抑制されたと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

老化に関与している細胞周期遺伝子BubR1と動脈硬化モデルであるApoE欠損(ApoE-/-)マウスを用いて、BubR1の動脈硬化疾患への影響をより反映するBubR1L/L-ApoE-/-マウスを作成した。このマウスを用いて腹部大動脈瘤を形成させ、腹部大動脈瘤モデルを作成した。このモデルではBubR1発現低下により、Angiotensin II 由来の腹部大動脈瘤の形成率と死亡率を有意に低下させ、それはelastinの破壊が抑制されたことによることまで探求した。
我々は研究前にはBubR1の発現低下は、内皮機能の低下や平滑筋細胞の減少といった、動脈の老化をもたらし、加齢に伴う動脈硬化性変化を来しやすくなる。しかし、平滑筋細胞の増殖抑制からアンギオテンシンIIが誘導する動脈瘤形成を抑制するのではないかと推測してきたことがこの結果により裏付けられた。
BubR1発現低下による、Angiotensin II 由来の腹部大動脈瘤の形成率の低下という現象は確認できたため、今後はそのメカニズムを調べるのみである。メカニズムの一つとしてはelastinの破壊への関与が考えられており、次にマクロファージの関与について調べる予定である。

今後の研究の推進方策

動脈瘤の形成には、マクロファージの血管壁への流入・増殖により生じる炎症性サイトカインやMMPsの活性化が必要であり、マクロファージの接着因子や、MMPsの活性化経路の分子機序の解明が進められている。マクロファージはM1, M2型のphenotypeに分類される。M1型は炎症反応を促進しMMPsを活性化するが、M2型は抗炎症作用を有している。動脈瘤の形成にどちらのマクロファージが関与しているかを観察するために、BubR1とM1/M2比との関連を評価する必要がある。
また、TGF-βを介する炎症性シグナルはMMPsの活性を制御しており、 TGF-βの炎症性シグナルにBubR1がどのように寄与しているのかを評価する予定である。
さらに、単球の血管壁への接着には、Thrombospondin-1のような血管恒常性を担う分子が関与しており、Thrombospondin-1とBubR1との関係性を評価する予定である。これらの実験の結果により、BubR1がAAA治療の新たな標的因子となる可能性がある。

次年度使用額が生じた理由

今年度中に動脈瘤形成へのマクロファージの関与を観察するためにBubR1とM1/M2比との関連を評価する予定だったが、動物実験施設の使用状況から、来年度に回さざるを得ない状況となり、次年度使用額が生まれた、その為、次年度に未使用額102,600円でマウス等を購入し、動脈瘤形成へのマクロファージの関与を観察する予定。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Angiotensin II誘発腹部大動脈瘤形成と 破裂の抑制の検証2018

    • 著者名/発表者名
      吉屋圭史、中山 謙、山下 勝、吉賀亮輔、 井上健太郎、森崎 浩一、古山 正、前原喜彦
    • 学会等名
      第118回日本外科学会定期学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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