研究課題/領域番号 |
17K10763
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川人 宏次 自治医科大学, 医学部, 教授 (90281740)
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研究分担者 |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大動脈二尖弁 / 胸部大動脈拡大 / 数値流体力学計算 / 壁せん断応力 |
研究実績の概要 |
大動脈弁二尖弁は半数に上行大動脈拡大を合併し、予後に影響を及ぼす。血行力学ストレスの関与が示唆されているが、発症機序は解明されていない。本研究では上行大動脈拡大を認める二尖弁症例を対象に、MRIデータに基づく患者個体別数値流体力学計算(CFD)を行い、壁せん断応力(wall shear stress: WSS)を中心とする血行力学因子の分布を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、これまで行ってきた大動脈二尖弁症例のWSS分布のCFD解析に加え、時空間勾配を指標化した振動剪断指数(OSI:Oscillatory Shear Index)分布の解析を、大動脈二尖弁症例6例と弁膜疾患および上行弓部大動脈拡大を認めないコントロール群3例に対して実施した。大動脈二尖弁症例のWSSは上行大動脈の大弯側・中枢を 中心に著明に上昇しており、これはコントロール群と比較して有意差を認めた。しかしながら、OSI分布に関しては、分布領域と最大OSI値ともに、大動脈弁二尖弁群とコントロール群で明らかな差はなかった。また、大動脈二尖弁症例のOSIは上行大動脈の小弯側~遠位弓部大動脈で上昇しており、WSSと異なる分布を示した。 また、大動脈二尖弁の4症例で大動脈壁組織のRNAを採取し、WSS高部位の大弯側とWSS低部位の小弯側の遺伝子発現の変化を、DNAマイクロアレイを用いて比較した。有意な発現変動(> 2 fold change(FC))を認めた遺伝子群は、42,545遺伝子中257遺伝子(0.6%)であり、高WSS部位でMMP13(FC:2.0), MMP21 (FC:2.5), MMP25 (FC:3.1) の発現上昇が認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記した研究結果を踏まえ、共同研究機関である名古屋工業大学(中村匡徳教授研究室)と共同で、自治医科大学の臨床研究倫理委員会の承認の元、胸部大動脈におけるCFD解析研究を実施している。大動脈二尖弁症例と非大動脈二尖弁症例それぞれで、WSSとOSIを中心とする血行力学パラメーターの分布マップを作成し、大動脈壁の組織学的変化との関連性を検証している。さらに、上行大動脈置換術が実施される症例に関しては、WSS高部位とWSS低部位で、上行大動脈壁の内膜~中膜組織を採取し、RNAを抽出している。 また、首都大学東京システムデザイン学部坂元尚哉准教授の研究室と共同で、大動脈血管内皮細胞と血管平滑筋細胞の共培養実験モデルを使用して、in vitroで大動脈壁細胞に異なる血行力学ストレス(WSS負荷)をかける実験も実施している。これまでの当研究グループの解析研究では、ヒト大動脈二尖弁症例の上行大動脈壁にかかるWSS値は非常に高く、最大30Pa以上に達する(J Thorac Cardiovasc Surg, 2017;153:S52-62)。本実験システムでは、2,10,20,40Paの壁せん断応力を負荷し、血管内皮細胞からのMMPやeNOS産生を計測している。今後、本実験システムも使用して、血行力学ストレスが、上行大動脈拡大をもたらすメカニズムを多角的に検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、共同研究機関である名古屋工業大学中村研究室・首都大学東京坂元研究室と共同で、大動脈二尖弁症例と非二尖弁症例の画像データおよび大動脈検体を使用した研究を継続する予定である。 具体的には、手術治療を施行する大動脈二尖弁症例と、上行弓部大動脈拡大がなく大動脈弁が正常な対照群を研究対象として、PC-MRIにより諸処の血流量を計測する。さらに、造影CTデータ(3DCT)も併せて使用し、専用画像解析ソフトウエア(SCRYU, Software Cradle Co. Tokyo, Japan)によるCFD血流解析を施行し、WSSやOSIを含めた血行力学因子の計測と血行力学パラメーター分布マップの構築を行う予定である。これに基づいて、摘出する大動脈検体から、血行力学パラメータ―の高発現部位と低発現部位の大動脈壁の構造変化を組織学的に解析する。さらに、内膜・中膜組織からRNAを抽出して、網羅的遺伝子発現解析を実施することを目標とする。遺伝子発現情報は、専用の解析ソフトでバイオインフォマテクス解析を実施し、大動脈拡大をもたらす分子細胞学疾患経路の解明を目指す。その後、validation実験もRNA・タンパク質レベルで実施する予定である。 大動脈壁細胞(血管内皮細胞・血管平滑筋細胞)を使用するin vitroのWSS負荷培養実験モデルも引き続き行い、上記遺伝子発現解析研究との関連性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は当初の予定と比較して、80万程度の残金があり、次年度使用額が発生した。次年度使用額が発生した主な理由としては、予備実験を行う期間が必要であったこと、既存の臨床画像データでのCFD解析実験に時間を費やす必要があったことなどが挙げられる。 繰り越し金を含めた平成30年度の使用額は約250万円である。本年度の関連研究への費用に関してはCFD解析に必要な専用ソフトウエアの購入に30万円、RNA抽出に関する消耗品の購入に30万円、DNAマイクロアレイ関連経費に90万円、遺伝子発現解析ソフトウエアの導入に40万円、in vitro実験に関連する消耗品の購入に30万円、学会発表・研究会議出席への旅費に30万円程度の支出を予定している。
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