本研究において、培養ウシ大動脈内皮細胞を拍動性の有無を追加した層流性または乱流性のずり応力を与え、細胞増殖や分化に関与するMARK経路や免疫炎症反応の中心的役割を果たすNF-κB経路、またHippo経路におけるユビキチンプロテアソームシステム(YPS)の関与に関する研究を行ったので報告する。 本研究の目的は、血流パターンの違いから見た血管内皮細胞の細胞応答の変化を検証することである。シェアストレス回路はpararell plate flow chambersシステムを用いて細胞を(1)定常層流、(2)一方向性拍動流、そして(3)二方向性拍動流(乱流)の3種類のシェアストレスに一定期間曝した。また、プロテアソーム系の関与を調べるために、プロテアソームインヒビター(MG132)を付加の有無について比較した。(3)はstaticな状態にくらべ、有意にIκBαが活性化されていた。一方で、(1)、(2)に関しては有意差は認めなかった。これにより(3)の乱流のみNF-κBを活性化させることが分かった。さらにリン酸化されたIκBαに関しては(1)や(2)の層流も(3)の乱流も変化は無かったが、トータル量としては(3)の乱流は有意にIκBαが減少していた。さらに、この乱流によるIκBαの減少が、 YPSによるものかどうかを調べるために、MG132を用いて比較したところ、MG132は乱流下のみにおいて引き起こされたtotal-IκBaの減少を阻害しており、一方で、層流では有意差はなかった。つまり、YPSが、乱流によって惹起されたIκBaの分解に関与していることが分かった。 この研究で、乱流がIkBaの分解を誘発し、NF-κBを活性化させること、また、そのIκBaの分解はYPSによるものであると判明した。一方で、層流はYPSを逃れ て、NF-κBの不活性化に寄与していることが示唆された。
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