研究課題/領域番号 |
17K10770
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古荘 文 久留米大学, 医学部, 助教 (80597427)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
田中 啓之 久留米大学, 医学部, 教授 (70197466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大動脈解離 / Syk |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大動脈解離における免疫制御分子Sykの役割を解明し、解離増悪の病態評価と制御療法を実現することである。申請者はB細胞活性化と炎症細胞活性化の両方に関わるSykの機能を解明することで解離病態の理解が進み、解離病態の評価や壁破壊の増悪阻止が可能になると着想した。免疫制御分子Sykが大動脈解離の増悪に中心的な役割を果たすという仮説のもと、B細胞、Sykによる解離病態制御機構を解明することを目的とする。申請者らは最近、コラーゲン架橋酵素阻害薬BAPNとアンジオテンシンIIの持続投与により2週間で解離を発症し壁破壊が増悪するマウスモデルを開発した。マウス大動脈解離病態とSykの関与を観察するために、野生型および先天性B細胞欠損マウスで解離モデルを作成した。野生型と比較して先天性B細胞欠損マウスでは解離が抑制される傾向がみられ、大動脈解離にSykが関与していると示唆された。また、野生型マウスにSyk阻害薬を投与した群では、非投与群と比較して病変長が長く、カプランマイヤー法で有意な生存率の低下を認めた。とくに下行大動脈では先天性B細胞欠損マウスで軽症、Syk阻害薬投与群では重度と解離病変の表れ方に差がみられた。免疫化学染色では、解離部分にリン酸化Sykを認めた。さらに、細胞腫を同定するために平滑筋アルファアクチンとリン酸化Sykの蛍光2重染色を実施した。解離部分に集積した炎症細胞でリン酸化Sykを認め、解離断端を中心として平滑筋にもリン酸化Sykがみられ、その活性化ピークは解離刺激3日目であることがわかった。今後は組織特異的遺伝子改変マウスで検討する予定である。ヒト大動脈解離に関しては、今年度は主にStanford A型解離の手術で組織採取を行い、今後このサンプルを用いて解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究経験により、モデル作成、データ収集、データ解析など技術的な面に問題はなく、申請書に示したロードマップに従い研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平滑筋とマクロファージ特異的ノックアウトマウスを作成し、大動脈解離における細胞特異的なSykの役割を検討する。ヒト大動脈解離に関しては、今年度は主にStabford A型解離の手術で組織/末梢血を採取しSyk活性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス解離モデルの重症度を厳密に定量化することに成功し、実験群間の差を鋭敏に検出することができた。そのため、予定よりマウス使用数を削減することができ、マウス購入費および飼育費も削減できた。次年度使用額は組織解析試薬などに用いる予定である。
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