研究課題
本研究の目的は、大動脈解離における免疫制御分子Sykの役割を解明し、解離増悪の病態評価と制御療法を実現することである。申請者はB細胞活性化と炎症細胞活性化の両方に関わるSykの機能を解明することで解離病態の理解が進み、解離病態の評価や壁破壊の増悪阻止が可能になると着想した。免疫制御分子Sykが大動脈解離の増悪に中心的な役割を果たすという仮説のもと、B細胞、Sykによる解離病態制御機構を解明することを目的とする。申請者らは、コラーゲン架橋構造阻害薬BAPNとアンジオテンシンIIの持続投与により2週間で解離を発症し壁破壊が増悪するマウスモデルを開発し、このモデルを用いて検討を行った。大動脈解離モデルにおける大動脈破裂および突然死の割合は野生型で約42%、μMTマウスで約12%(p<0.05))であり、IgGを投与したμMTマウスでは、解離刺激開始7日目以降から大動脈破裂および突然死の劇的な増加がみられ、その割合は約69%に達した。解離刺激後の大動脈壁には、発症前から解離好発部位にIgGおよび自然IgG(抗原刺激が入る前から存在するIgG)の抗原であるフィブリノゲンが沈着していた。これらの結果は、B細胞およびIgGが解離慢性期の破壊進行を引き起こすこと、さらに急性期に自然IgGが大動脈破裂、突然死を引き起こすことを強く示唆する。以上の知見より申請者らは、IgGが解離急性期から慢性期に至るまで組織破壊を統合的に制御する可能性を見出した。IgGの作用には炎症促進、炎症抑制など多面性がある。今後、申請者らはSykを含めたIgGの機能を媒介するエフェクター分子(炎症抑制型Fcγ受容体、炎症活性化型Fcγ受容体、補体系)の機能解明を通じて解離病態におけるIgGの役割を明らかにし、解離病態の全貌解明を目指す。
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Arterioscler Thromb Vasc Biol (in press)
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JACC Basic Transl Sci (in press)