研究実績の概要 |
血管病変におけるIgG4関連疾患 (IgG4-related vascular disease; IgG4-RVD)では,解離や瘤破裂等の急性な致死的合併症があり,緩徐な経過の他臓器のIgG4関連疾患とは予後が大きく異なるため,その進展,予後因子の解明が急務である.我々は,IgG4-RVDでは,炎症性マーカーの中心的役割を果たすIL-6高値であることを解明し,予後因子としてIL-6をはじめとしたCytokine(CKs)や,血管壁を直接破壊するMatrix metalloproteinases (MMPs)に注目し,保存血清や切除材料の組織像から,CKs, MMPsを検討し,経過や予後との関連を検討する事を本研究の目的としている. 平成30年度は, IgG4-RVDとしてIgG4-related abdominal aortic aneurysm (IgG4-AAA)に注目し,non-IgG4-inflammatory AAA,atherosclerotic AAA(aAAA),解剖例の3群を対照群として比較した.MMPs局在を解明するために, IgG4-RVD及び比較対照群のパラフィンブロックからの薄切標本を用いて,MMPsの免疫染色を施行した.4群全てにおいて,MMP2, MMP9及び MMP14陽性細胞が動脈外膜に多数認められ,他のMMPsの陽性像は乏しかった.特にIgG4-AAAでは,他の3群に比較し,動脈外膜に分布するMMP2, MMP9の陽性細胞総数が有意に多かった. MMP2, MMP9及びMMP14の発現を担う細胞の同定のために,MMPsと組織球(CD68, CD163),樹状細胞(CD1a, CD11b, CD33,CD123)の二重免疫染色及びdual in situ hybridizationを施行し検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.IgG4-RVD,その比較対照群において血清MMPsの測定 ELISAにおる測定が終了し,統計解析中である. 2.IgG4-RVD,その比較対照群における組織のMMPs発現細胞,その部位の同定 切除材料を用いた局所のIgG4-RVDの活動性の評価: IgG4-RVDの動脈壁肥厚,炎症細胞浸潤の種類,程度を計測し,IgG4-RVDの活動性を,炎症細胞浸潤の強い時期と線維化の強い時期の2期に分けての評価が終わり,統計解析中である.
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