研究課題
(1)次世代画像解析システムを用いたEBUS-TBNAに関しては、前向き臨床試験「気管支超音波内視鏡周波数解析による胸腔内腫瘍診断補助システムの構築」(UMIN000026934)を開始し、診断精度の検討周波数特徴量をリアルタイム表示できる超音波観測装置(EU-Y0005)を使用し、EBUS-TBNAを112症例に対して施行した。(2)生検および再生検バンキングの維持拡大に関しては、千葉大学大学院生命倫理審査承認に基づき、生検検体保存を継続している。また再生検に関しては、千葉大学においては前述の検体保存を継続するとともに、千葉大学以外の施設に関して再生検の臨床情報を前向きに集積することを目的とした、「ちば再生検コンソーシアム」を立ち上げた。(3)mRNA およびmiRNA 発現解析による腫瘍細胞検出システムの開発に関しては、走査分子計数法によって、リンパ節転移に特徴的なmiRNAの測定が可能であるかについて、臨床検体を用いた基礎的な検討を行った。miRNA抽出後にリアルタイムPCRと走査分子計数法によるmiRNA発現を比較検討した結果、残存する自家蛍光物質の自家蛍光強度は低く、遺伝子発現解析結果は両者に相関関係を認め、走査分子計数法による解析は可能であると判断した。(4)生検検体による抗癌剤感受性試験の改良に関しては、肺癌治療における免疫チェックポイント阻害薬の重要性が増している反面、有用なバイオマーカーが存在しないことから、コラーゲンゲルによる3次元培養を応用した感受性試験開発について基礎的検討を行った。(5)治療法選択のための遺伝子発現解析およびクリニカルシークエンスの開発に関しては、微小乳頭型肺腺癌について、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、微小乳頭型肺腺癌に特徴的な遺伝子発現を見出した。また、メチル化解析遺伝子チップによるメチル化解析も行った。
2: おおむね順調に進展している
(1)に関しては、現在症例集積を終了し、診断成績に関して病理診断および臨床診断の経過観察期間となっている。(2)に関しては、千葉県内の12施設が参加し、ホームページを作成した(http://www.m.chiba-u.jp/class/chiba-rebiopsy/index.html)。千葉大学大学院倫理審査承認(「原発性肺癌における再生検症例データベースの構築」)をもとに、再生検情報を前向きに登録している(UMIN000027865)。(3)に関しては、EBUS-TBNAでのCore検体および穿刺針洗浄液からmiRNAを抽出し、リアルタイムPCRおよび走査分子計数法の両者でmiRNA発現解析を行った。その結果、miR-200bおよびmiR-200cに関して両測定法間には相関関係があり、また転移陽性リンパ節で高発現を認めた。ただしlet-7に関しては走査分子計数法による測定において発現が高く見積もられる傾向にあり、相関関係を認めなかった。これは、走査分子計数法ではlet-7 familyを非特異的に検出していることが考えられた。なお、core検体と穿刺針洗浄液では、miR-200発現解析に影響はなく、診断等に影響を与える可能性がない穿刺針の洗浄液においても十分に解析が可能である事が示された。(4)に関しては、A549と末梢血単核球(PBMC/ CD56+細胞/ CD8+細胞)との共培養を行う実験系を確立した。PBMCの量と比例してIL-6が多く産生されていることが確認された。(5)に関しては、網羅的遺伝子発現解析の結果、微小乳頭型肺腺癌に特徴的な遺伝子発現を同定し、リアルタイムPCRにおいても結果が追認された。GO解析では、細胞周期や遺伝子転写に関連する遺伝子が特徴的な遺伝子として同定されており、活動性の高い腫瘍であることが示唆された。
(1)に関しては、臨床フォローのデータを追加した最終解析を行う。臨床施行時に、周波数解析結果表示が関心領域内でばらつく症例があることが分かっており、これらの症例についての結果の解釈についても画像解析を行うとともに考察を進める。(2)に関しては、再生検の臨床データを前向きに集積するとともに、再生検における最適なモダリティの提言が行えるように解析を進める。また、千葉大学生検検体については、治療開始前と耐性獲得後の検体について、クリニカルシークエンスを行う予定である。(3)に関しては、走査分子計数法を実際に臨床の現場で行う事が可能かについて、さらなる検討を行う。具体的には、走査分子計数法では臨床検体に含まれる自家蛍光物質の影響が懸念されるため、この影響を最小限に抑えることが可能な測定系について検討を行う。また、これまでの解析ではmiRNAを抽出精製後に解析を行っていたが、臨床現場での使用を想定し、簡易的なmiRNA抽出処理のみで、短時間に解析可能な技術について、臨床検体を用いた検討を行う予定である。(4)に関しては、培養条件を変えながら、PBMCと腫瘍細胞を共培養する系でのサイトカイン産生や腫瘍増殖についての検討を進めるるとともに、共培養後のPBMCについてフローサイトメトリーによる解析を行い、免疫細胞の活性化の状況について詳細な検討を行う予定である。(5)に関しては、同定された高発現遺伝子については、微小乳頭型肺腺癌の病理組織検体を用いて蛋白発現についても高発現であるか確認を行う準備を進めている。また、メチル化解析の結果からはエピゲノム変化の影響を示唆する結果が得られており、遺伝子発現解析結果とメチル化解析結果を合わせた微小乳頭型腺癌における遺伝子変化を明らかにしていく予定である。
再生検検体に関して、実施可能である場合にはクリニカルシークエンスを予定していたが、次年度に実施する予定となった。また抗癌剤感受性試験検体についても、共培養後の検体についてサイトカインアレイを行う予定であったが、次年度以降に実施する予定であるため、次年度使用額が生じた。
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http://www.m.chiba-u.jp/class/chiba-rebiopsy/chibauniversity.html