研究課題
1)次世代画像解析システムの開発に関しては、超音波気管支鏡ガイド下針生検施行時の超音波気管支鏡画像について、周波数特徴量のうちinterceptを検査中にリアルタイム表示できる臨床試験機を用いて、EBUS施行中にリンパ節にROIを設定し得られたintercept (dB)の値を前向きに記録し(UMIN000026934)、その後対象症例の経過観察期間を終了した。前向き臨床試験の結果、超音波気管支鏡画像のリアルタイム周波数特徴量解析により約90%のリンパ節において転移陰性リンパ節の予測が可能であった。2)走査分子計数法(SSMC)を用いた腫瘍細胞検出技術の開発においては、針生検検体および針生検後の針洗浄液のような極微量な検体を用いても、特定のマイクロRNAについてSSMCによる高感度検出が可能であり、本法を用いた肺がんリンパ節転移高感度検出の可能性が示唆された。3)免疫療法にも対応できる抗癌剤感受性試験の開発では、3次元コラーゲンゲル(プライマスター)の国内での入手が困難となった。このため、リンパ節中のリンパ球分画を直接分析する手法に切り替え、マスサイトメトリー(CyTOF)を用いたリンパ球解析に研究方法を変更し検討を行った。その結果、腫瘍近傍のドレナージリンパ節において、遠隔リンパ節とは異なる特徴的なリンパ球分画を認めた。4)遺伝子発現解析・クリニカルシークエンスでは、①腺癌予後不良組織亜型である微小乳頭型腺癌を対象とする網羅的DNAメチル化解析および次世代シークエンサーを用いたクリニカルシークエンス解析を行った。②扁平上皮癌については、間質性肺炎/肺線維症合併肺癌に対して、網羅的DNAメチル化解析および次世代シークエンサーを用いたクリニカルシークエンス解析を行った。予想に反してこれらの肺癌ではメチル化の頻度は低いことが判明し、遺伝子変異の影響について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
1)EBUSを施行した肺癌もしくは肺癌を疑う97例、197リンパ節に対して周波数特徴量を記録し、病理および臨床経過と比較した結果、周波数特徴量解析によるリンパ節転移診断予測の感度は85.1%、特異度76.7%、陽性適中率67.9%、陰性適中率89.9%、正診率は79.7%であった。2)5種類のマイクロRNA (miR-200a、miR-200b、miR-200c、let-7e、miR-141)について①検体中のmiRNAがSSMCで測定可能な濃度であるか、②検体由来のmiRNAに残存する自家蛍光強度の影響、③SSMCとリアルタイムPCRによる計測結果の差異、について検証を行い、①検体中のmiRNA量はCore検体だけでなく針洗浄液においてもSSMCで検出可能な十分量が得られていた(6.0x10^4コピー/μL以上)。②自家蛍光強度は1.5x10^4コピー/μL程度あったが、全処理によりさらに軽減できるものと思われた。③miR-200bおよびmiR-200cについてSSMCとリアルタイムPCRでの計測に相関を認めた。3)①これまで得られた細胞障害性抗癌剤感受性試験については、培養前細胞と1次培養後の腫瘍細胞についてDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたパネル検査による腫瘍細胞の相同性を確認する準備を進めている。②免疫療法に対する検討では、CyTOFを用いたリンパ球解析を行った結果、腫瘍近傍のリンパ節では、特定の抗原を発現するTリンパ球が有意に増加いることを確認した。4)微小乳頭型腺癌について行った網羅的DNAメチル化解析では微小乳頭亜型がクラスタリングされ、特徴的なメチル化が生じていることが確認された。また次世代シークエンサーによる遺伝子発現解析では特徴的な遺伝子を同定し、現在タンパク発現を免疫染色で確認し、微小乳頭亜型のマーカーになりうるかの検討を行っている。
1)ちば再生研コンソーシアムのもとで行っていた、千葉県内多施設での再生研データベースについては症例集積を終了し、解析を行い発表の予定である。また生検検体バンクについては、引き続き検体の保存・管理を行っていく。2)周波数特徴量解析によるリンパ節転移予測技術は今後、より低侵襲かつ効率的な検査を行う上で貢献できるものと考えている。臨床での実用化に向け、周波数特徴量に変化が生じるメカニズムの病理学的解析および周波数特徴量と予後との関連について、検討を進める予定である。3)SSMCを実用化するため、結果が出るまでの検査時間の短縮および生体材料に特有のノイズの影響について解析を進めていく。具体的には、検査工程を短縮化して精製miRNAとすることなく、特定のmiRNAが高感度検出できるかについて解析を進める。またノイズの対策としては、現在使用しているアビジン・ビオチンシステムの最適化に関する検討を進める予定である。4)CyTOFでの解析について、免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を与える可能性のあるリンパ球に注目した新たな抗体パネルセットを免疫細胞医学教室と共同で作成した。このパネルセットを用いて、超音波気管支鏡ガイド下針生検で腫瘍ドレナージリンパ節の検体を採取し、臨床検体での解析を進めていく予定である。5)引き続き、予後不良組織亜型についての腫瘍学的特徴を明らかにするため、これまで行ってきた網羅的解析で得られた結果について、検証研究を進めていく予定である。これと並行して、抗癌剤感受性予測研究と合わせ、現時点での免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーであるPD-L1発現と腫瘍遺伝子変異量(Tumor Mutation Burden)の両方を生検検体で解析し、臨床効果との比較検討を行う予定である。
当初計画していたコラーゲンゲルによる3次元培養のための試薬購入費が、試薬の入手が困難となったため、CyTOFを用いた研究に研究計画を変更した。このため、試薬購入時期の問題で次年度使用額が生じた。次年度使用額については、変更した研究計画に基づき、CyTOF関連の試薬購入に使用する予定である。
ちば再生研コンソーシアムをちば肺癌診断コンソーシアムに改称した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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巻: - ページ: -
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