研究課題/領域番号 |
17K10775
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀海 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60422226)
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研究分担者 |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
中島 崇裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20400913)
吉野 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40281547)
本橋 新一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60345022)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / 免疫チェックポイント / エピトープ |
研究実績の概要 |
遺伝子変異の多い肺癌や悪性黒色腫に対し免疫チェックポイント阻害療法の有効性が認められ、現在の癌治療そのものを変化させており、変異蛋白由来の抗原が標的になっている可能性が考えらえる。日本人のサブセット解析などもデータとして出てきているが、まだHLAの関与などは十分に分かっていない。本研究の目的は、日本人の非小細胞肺癌における免疫チェックポイント阻害療法の標的及び治療反応予測因子を解析することである。全日本人の約80%にHLA-A2やA24が発現しており、そこに提示されうる腫瘍由来T細胞エピトープ数と共通抗原の存在に着目し、臨床腫瘍検体の全エクソーム解析から変異遺伝子を同定し、HLA-A2/A24親和性の高いアミノ酸配列モチーフをin silicoで解析するを最終目標としている。進行期非小細胞肺癌に対し抗PD-1阻害療法を受ける予定、治療中、治療後の患者から、本研究への参加同意の得られた症例を対象に血液を採取し、SRL社に外注委託するため、千葉大学の医学倫理申請を申請し、患者への説明用紙、同意書の作成を行い、各解析を担当する教室や施設に研究体制を整備した。まず当施設での肺癌に対して、免疫チェックポイント療法を施行した症例のピックアップを電子カルテの検索システムを用いてい行った。まずその使用詳細を確認し、それぞれの症例でPD-LIの染色によるTPS測定の有無を確認し、また臨床的な効果についての確認を行いリスト化を行った。臨床効果を確認するとやはり各症例により効果は様々であり、TPSの値とある一定の相関関係は示された。今後はこの臨床データを確認された症例のうち、同意書の得られた症例を対象に血液サンプル解析に進みたいところだが、コロナ診療の影響もあり現在この時点での研究が滞っている現状がある。条件が整ったところでの再開を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究における手順は、①免疫チェックポイント阻害療法を受けた非小細胞肺癌患者の腫瘍及び非腫瘍サンプルより全エクソームの塩基配列を解析し、全変異領域・様式を特定する。この際に各患者のHLA genotypeとその腫瘍組織における発現を確認しておく。②当該HLA genotypeに提示されうるアミノ酸配列モチーフをコードし得る変異遺伝子をin silicoで検索し、腫瘍由来T細胞エピトープの候補ペプチドを探索する。③免疫チェックポイント阻害療法の反応群と非反応群で、腫瘍由来T細胞エピトープ候補のプロフィール(数、共通抗原の有無)を比較検討する。④反応者で腫瘍由来T細胞エピトープ候補が多い、あるいは反応者間で共通T細胞エピトープがある、などの知見が得られれば、当該T細胞エピトープを合成してin vitroで合成HLA分子との結合能、T細胞の反応性などの免疫学的解析を行う事である。これまで千葉大学呼吸器外科で術後再発や進行期肺癌に対し免疫療法を行った患者抽出をデータベースから行い、対象患者の同定を行い、患者情報 や、治療薬剤、効果及び副作用等の臨床情報を収集し臨床データの解析を行っている。採血サンプル採取の前にまず気管支鏡生検検体や手術検体を用いたPD-L1の免疫染色を追加して解析を行い臨床的な予測因子としての解析を行っている。採血サンプル取得のため臨床試験の申請用紙と患者説明及び同意書作成を行って千葉大学臨床試験部に申請したが、倫理申請にも少し時間を要した。各部署とのサンプルの扱いにや解析方法の確認にも時間を要している状況で、コロナ診療への対策も加わり現在は研究を一時中断している状況である。コロナ診療への配慮が減少した時点での再開を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ診療に対して呼吸器外科でも病棟編成などの影響を受けたが、コロナウイルスワクチンなどの普及に伴い研究の再開を検討している。再度時間もあいており、臨床的なデータを再検証して、整理する。治療効果判定の確認とPD-L1の発現率とHLA genotypeとの相関を解析する。試験の説明、同意を得られた患者からの血液サンプルの解析体制を整えるのと平行して、気管支鏡生検サンプル及び手術の検体を用いて腫瘍、非腫瘍部の全エクソームの塩基配列を解析する。術後症例では組織凍結標本より癌部および非癌部を採取し、mRNAを調整してcDNAを作成する。ライブラリーを構築後、HiSeq(Illumina社)を用いてタンパク質コード遺伝子の全エクソームの塩基配列を解析する。非癌部由来cDNAの配列を参照配列とし、癌部由来の配列をマッピングして変異箇所の解析を行ってリスト化し、missense変異の箇所、数の情報を得る。同時に各患者のHLA genotype(正常組織)と腫瘍組織における発現を確認しておく。腫瘍由来T細胞エピトープのin silico探索全エクソン塩基配列の解析結果より、missense変異を含み、各HLA genotypeに結合しうる9アミノ酸からなるペプチドモチーフをプログラムしたソフトにて該当するmissense 変異およびその翻訳された変異peptideを探索する。抗PD-L1療法の治療反応群患者群と治療非反応群について群分けし、missense変異の数、腫瘍由来T細胞エピトープ数を比較検討する。抗PD-L1阻害療法における腫瘍縮小効果の有無とmissense変異数、候補となった腫瘍由来T細胞エピトープ数との関連を検討する。またmissense変異のうちsmoking signatureやAPOBEC関連変異群についても着目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を遂行するため、まず千葉大学呼吸器外科における術後再発症例や進行期非小細胞肺癌に対し免疫療法単独や免疫療法と化学療法の併用を行った患者をデータベースから抽出し、対象患者の同定を行い、患者背景因子や、使用薬剤、効果、投与期間、副作用等の詳細な臨床情報を収集し解析を行う。生検サンプルや手術検体を用いた免疫染色などの解析を行い、ある程度のデータは得られつつある。採血サンプル取得のため臨床試験の様式作成と患者説明・同意書作成を行い、千葉大学の臨床試験部への申請を行い、承認を得るに至った。臨床試験倫理申請に時間を要した事とサンプルの取り扱い及び解析手段の確認に時間を要し計画よりだいぶ遅れた。さらに試験該当患者に対し説明後同意の得られた採血サンプルを採取し、得られた検体を用いて千葉大学分子腫瘍学やかずさDNA研究所での解析を進める段階だったが、コロナ診療に対し当診療科がコロナ診療により病棟編成などの影響を受け、臨床への負担から研究への時間を十分に確保できず中断とした。今後ワクチン普及に伴い、再度研究体制を整備し再開を検討している。
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