研究課題/領域番号 |
17K10776
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
和田 啓伸 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (90514604)
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研究分担者 |
菅波 晃子 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (10527922)
吉野 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40281547)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 皮下腫瘍マウスモデル / 肺腫瘍マウスモデル |
研究実績の概要 |
平成29年度は、インドシアニングリーンを組み込んだLiposomally formulated ICG with an alkyl chain (LP-ICG-C18)を投与するための、皮下腫瘍マウスモデル・肺腫瘍マウスモデルの作製を行った。具体的には、ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu 8週齢雄)に対し、ヒト癌細胞(A549;腺癌) 5.0×10E6個と細胞外気質マトリゲル100uLの混和液を皮下注射、またはヒト癌細胞1.0×10E6個と細胞外気質マトリゲル50uLの混和液を気道内投与した。 皮下腫瘍については、マウスの皮下にヒト癌細胞混和液を注入後1か月程度で皮下腫瘍が生育するのが確認できた。腫瘍は長径10㎜を越えるまで観察し、10㎜以上となった時点で犠牲死させて摘出し、病理学的に腺癌であることを確認した。皮下腫瘍マウスモデルの作成に関しては技術的に問題なく施行できた。皮下腫瘍モデルは犠牲死させることなく、腫瘍の変化を確認できる点で重要である。今後は、LP-ICG-C18を経静脈的に投与し、その後、経時的にLP-ICG-C18が腫瘍に集積していく経過を観察する予定である。 今年度は、肺腫瘍モデルの作成にも着手した。肺腫瘍モデル作成のためにはヒト癌細胞混和液を経気道的に肺内へ投与する必要がある。サージカルルーペを使用して、23G金属カテーテルを気管内に挿入し、カテーテルを通して混和液を注入した。しかしながら、手技的に難しく、気管内投与時に窒息や気道損傷により死亡したり、うまく生着せずに投与後にCTで腫瘍が確認できないことなど、腫瘍形成の成功率がまだ低かった。現在、肺腫瘍モデル作成手技の確立を試みている。モデル作成手技が安定し次第、LP-ICG-C18を経静脈的に投与し、LP-ICG-C18の肺腫瘍への集積を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は皮下腫瘍モデルの作成は順調に進んだが、肺腫瘍モデルの作成に難渋した。皮下腫瘍モデルの作成は高い成功率であり、手技的には安定していると考えている。しかしながら、肺腫瘍モデルについては、いまだ手技的に安定しておらず、モデル作成成功率は低い状態である。ヒト癌細胞混和液を気管内注入する際の麻酔深度や、注入後回復するまでの間のケアを調整する必要がある。また、癌細胞株をかえることで生着率が変わる可能性があるため、次年度に試す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の研究の推進方策】 本研究課題における目的は、LP-ICG-C18が腫瘍に集積する特性を利用して、近赤外線蛍光イメージングを用いて呼吸器外科手術における小型肺悪性腫瘍の局在診断に応用することである。そのために、まずはヒト肺癌細胞株を用いて皮下腫瘍を作成し、LP-ICG-C18が集積するかどうか、また至適用量や至適時間などを明らかにする。現時点で、皮下腫瘍モデルは安定して作成できており、次年度はLP-ICG-C18を経静脈的に投与してその体内動態を明らかにする。 また、実臨床に応用するためには肺腫瘍モデルが必要であり、今後、ヒト肺癌細胞株から作成した肺腫瘍を用いて、LP-ICG-C18が集積するかどうかを確認する。このモデルについては、まだ作成成功率が低いため、次年度はその精度をあげるよう手技の見直しや、他の細胞株への変更などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は皮下腫瘍モデル、肺腫瘍モデルの作成のみ行っており、LP-ICG-C18を使用せず、その作成にかかる費用を使用しなかったため次年度に持ち越しとなった。次年度は、LP-ICG-C18作成のために使用する予定である。
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