研究課題
本研究では特発性肺線維症(IPF)合併肺癌の臨床手術検体を用いて、Infiniumビーズアレイ、エクソンシークエンスを用いた網羅的遺伝子解析を行い、得られた遺伝子プロファイルを元に遺伝子学的特徴や発癌機構、ピルフェニドンの効果を検証する事を目的としている。前年度では異常メチル化解析を行い、肺扁平上皮癌は大きく2つのepigenotype(高メチル化群、低メチル化群)に分類され、IPF合併扁平上皮癌では低メチル化傾向を示すタイプの腫瘍が多い事が分かった。H30年度の成果:前年度抽出したメチル化遺伝子に加え、新たなメチル化遺伝子を加え、パイロシークエンス法による検証を行いepigenotypeを再分類した。臨床情報を用いて多変量解析による予後解析を行ったところ、低メチル化が独立した予後因子である事がわかり、IPF合併扁平上皮癌は分子生物学的にも予後不良であるタイプの癌が多く含まれる可能性が示唆された。網羅的解析の症例数を追加し、IPF合併肺癌20例、IPF非合併肺癌20例に対して、FFPEの検体を用いてInfiniumビーズアレイによる異常メチル化検証を行ったところ、凍結検体のみの解析と同様にIPF合併扁平上皮癌では低メチル化傾向を示すタイプの腫瘍が多い事が分かった。さらにTCGAのデータ(390例)を用いた解析でも、低メチル化はIPF合併例と相関し、予後不良である事が分かった。メチル化遺伝子とピルフェニドン投与例に有意な相関は認められなかった。
3: やや遅れている
RNAシークエンスを予定していたが、抽出したRNAの品質が確保できず、施行できなかった。リアルタイムPCR法による遺伝子発現の検証を行ったが、同様に品質の問題で有意な結果は得られなかった。エクソンシークエンスに関してはDNA量の不足や品質不良により、検体調整に時間を要したが、現在シークエンスの作業を行えている。
最終年度ではエクソンシークエンスによる遺伝子変異解析を行う。また免疫染色やFISH等を用いた形態学的評価も行い、さらに抽出された遺伝子に関しては機能解析も行う。ピルフェニドンの効果に関しても遺伝子学的な側面から合わせて検証する。臨床検体のRNAの品質不良のため、主に異常メチル化解析、遺伝子変異解析からIPF合併肺癌に対する遺伝子異常の解明に向けて取り組む予定である。
初年度に研究代表者の異動があり、環境を整えて研究を開始するまでに遅滞が生じたことが当初の予算案からのずれとなり、繰越金が生じる結果となった。現在研究は順調に進行中であり、最終年度までに予定通りの予算が消費される見通しである。
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