研究課題/領域番号 |
17K10780
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 知之 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00510314)
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研究分担者 |
花岡 淳 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00452243)
寺本 晃治 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (10452244)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非小細胞肺がん / 免疫チェックポイント阻害薬 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究期間内においては、非小細胞肺がんに対する免疫チャックポイント阻害薬の治療効果予測のバイオマーカーを探索するために、末梢血中の可溶性PD-L1タンパクに着目した。非小細胞肺がん患者において、末梢血中の可溶性PD-L1タンパクの発現レベルは、がん組織中のPD-L1発現強度と相関している可能性を想定した。この仮説の検証のために、非小細胞肺がん患者(n=63)の手術前後の末梢血から血漿を回収して、血漿中の可溶性PD-L1タンパクの濃度をELISA法で測定した。血漿中の可溶性PD-L1レベルは、手術1か月後には、手術前よりも軽度の上昇を認めたが、約30%の症例においては、手術前よりも10%以上の上昇を認めた。手術前の血漿中の可溶性PD-L1レベルと予後(手術後の無再発生存期間)との関連について調査したところ、手術前の血漿中の可溶性PD-L1レベルが高値であった群では、低値であった群に比較して予後不良である傾向があり、特に、リンパ節転移や遠隔転移を認めない群(pN0M0群)においては、有意に予後不良であった。次に、肺がん組織に対して、抗PD-L1抗体(clone: 28-8)を用いた免疫組織染色を行い、がん細胞のPD-L1発現強度を半定量化して求めた。その後、がん細胞のPD-L1発現強度と手術前の血漿中の可溶性PD-L1レベルとの関連について調査したが、両者の間に有意な相関は認めなかった。肺がん組織のPD-L1免疫組織染色を、さらに解析すると、PD-L1陽性細胞は、単にがん細胞のみならず、腫瘍浸潤マクロファージも含まれることが判明した。このことから、手術前の血漿中の可溶性PD-L1レベルや、手術後の可溶性PD-L1レベルの変動には、腫瘍浸潤マクロファージも関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
末梢血中の可溶性PD-L1タンパクレベルの継時的なモニタリングが、がん細胞のPD-L1発現レベルの代替マーカーとして有用である可能性を予測したが、今年度の研究結果から、末梢血中の可溶性PD-L1タンパクレベルは、必ずしもがん細胞のPD-L1発現レベルを反映しているとは限らないことが示唆された。さらに、末梢血中の可溶性PD-L1タンパクレベルは、がん組織中の他のPD-L1陽性細胞である腫瘍浸潤マクロファージによって制御されている可能性が浮上した。このことは、非小細胞肺がんに対する免疫チャックポイント阻害薬の治療効果予測のバイオマーカーを探索する際には、単にがん細胞のみならず、がん間質のPD-L1陽性細胞にも着目する必要があるという新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍浸潤マクロファージのタイプ別(M1とM2マクロファージ)におけるPD-L1発現レベル、またにPD-L1発現を制御する因子の特定を行う。さらに、腫瘍浸潤マクロファージによる可溶性PD-L1タンパクの産生について特定する。さらに、免疫チャックポイント阻害薬のPD-L1陽性の腫瘍浸潤マクロファージへの影響についても調査する。
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