研究課題/領域番号 |
17K10784
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
冨田 秀太 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10372111)
|
研究分担者 |
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
宗 淳一 岡山大学, 大学病院, 講師 (90559890)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 次世代シークエンサー / 分子バーコード / ターゲットシークエンス |
研究実績の概要 |
分子バーコード技術を用いた次世代シーケンサー(NGS)解析により0.1%レベルの超低頻度体細胞変異を検出することが可能となり、5%程度の解析精度で実施された大規模がんゲノムデータベースの常識を超え、共存する遺伝子変異(co-mutation)や、膨大な機能未知遺伝子変異(VUS)が明らかとなり、その機能解析が注目を集めている。本研究では、上皮成長因子受容体(EGFR)変異陽性の肺腺がんを対象に分子バーコード技術を用いたNGS解析を実施し、既存の臨床遺伝子検査との整合性を確認し、共存する遺伝子変異や機能未知遺伝子リストを作成し臨床病理との関連性を解析する。 現在までに臨床遺伝子検査によりEGFR遺伝子変異陽性となった64症例を解析対象として、凍結組織からgDNAを抽出し、がん関連47遺伝子を含むターゲットシーケンスを分子バーコード(molecular barcoding)技術を用いた次世代シーケンサー(分子バーコードNGS)解析を実施した。 臨床遺伝子検査と分子バーコードNGS解析の結果は63/64症例で一致していた。また分子バーコードNGSを用いた症例でテクニカルな重複を検証した結果、解析結果は完全に一致しており、テクニカルな再現性を検討した結果から、分子バーコードNGSの優位性が明らかになった。分子バーコードNGSを用いて上皮成長因子受容体(EGFR)変異における主たる遺伝子変異(L858R, Exon19del, G719S,T790M)と副たる遺伝子変異(L718Q,E709K,R776Hなど)の共存を含む遺伝子リストを作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床遺伝子検査によりEGFR遺伝子変異陽性となったpStage IA期の39症例、pStage IB期の14症例、pStage II-III期の11症例の計64症例の凍結組織から十分量のgDNAを抽出し、分子バーコード(molecular barcoding)技術を用いたがん関連47遺伝子をターゲットとしたライブラリーの作成とシークエンスを実施した。 分子バーコードNGSを用いてテクニカルな重複を検証した結果、解析結果は完全に一致していたのに対し、分子バーコードを用いない従来のターゲットシークエンス手法によるテクニカルな重複を検証した結果、解析結果の一致率は58%であり、テクニカルな再現性を検討した結果から、分子バーコードNGSの優位性が明らかになった。 分子バーコードNGSを用いてがん関連47遺伝子のターゲットシークエンスを実施したところ、1症例平均で2.5個の遺伝子変異が抽出されたのに対し、分子バーコードを用いない従来のターゲットシークエンス手法では1症例平均で5.2個の遺伝子変異が抽出されており、分子バーコードNGSを用いることで、擬陽性の可能性が高い遺伝子変異の抽出を抑制できる事が明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
デジタルPCR(BioRad社ddPCR使用予定)を用いて、変異アレルの確認を実施する。確認する評価系は既に構築済みで、予備的検討からT790Mの遺伝子変異が検出された症例について、ddPCRを用いて変異アレルの存在を確認している。 29年度に作成した遺伝子変異リストに基づき、共存する遺伝子変異に関して、機能解析を実施する。Ba/F3やBEAS-2Bを用いたin vitro解析系を用いた腫瘍増殖能や薬剤感受性テスト、Xenograftモデルを用いたin vivo解析系による腫瘍形成能や薬剤感受性等の機能解析を実施する。また、TCGAなどの大規模がんゲノム解析結果のDBから、遺伝子変異プロファイルと遺伝子発現プロファイルを入手し、遺伝子変異と相関する遺伝子発現データを抽出する。これらの遺伝子変異と相関する遺伝子発現データのGSEA解析等のパスウェイ解析を実施することで、遺伝子変異に由来する機能変化をin silicoでも解析を進める。これらの機能解析の結果を踏まえて、日本人の肺腺がん特異的な機能未知遺伝子変異(VUS)に対するアノテーションを更新する。また、EGFR遺伝子変異陰性となった症例についても解析を実施し、遺伝子変異が無かったのか、遺伝子変異が検出されなかったのか検討し、臨床遺伝子検査の結果について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画通りに、細胞培養等の実験に用いる試薬代として使用したところ、予定より安価に購入できたために、次年度使用額が生じた。 次年度使用額(78,849円)は平成30年度経費と合わせて、分子生物学的試薬や次世代シーケンサー試薬の購入費用として使用する。
|