研究課題/領域番号 |
17K10790
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡崎 幹生 岡山大学, 大学病院, 講師 (50467750)
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研究分担者 |
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 講師(特定教員) (20709266)
中岡 裕智 愛媛大学, 医学部, 技術員 (30795464)
佐野 由文 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60322228)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺移植 / 虚血再灌流障害 / 心停止ドナーからの肺移植 |
研究実績の概要 |
心停止ドナー(DCD)からの肺移植後の虚血再灌流障害(ischemia reperfusion jury:IRI)におけるmolecular mechanismは不明な部分が多く、臨床応用のためにもその解明が重要である。我々の研究成果では、DCDからの肺移植後のIRIは生体・脳死肺移植後のIRIとは異なった病態であることが示唆された。本研究では、DCDからの肺移植後のIRIのメカニズム、主に血管内皮細胞の働きを解明し、さらにDCDからの肺移植後のIRIの抑制・予防することを目的とする。分泌タンパク質R-spondinファミリーはWntシグナル伝達経路を活性化し、発生過程の多くの現象や疾患の発症に関与していることが知られており、多くの新たな発見が報告 されている。R-spondinファミリーの一つ、R-spondin3は血管の発生に大きく関与し、R-spondin3は血管内皮細胞間の接着を強固にすることによって、小腸の虚血再還流障害を抑制するという報告があるまた、血管内皮細胞間の接着を強固にすることはin vitroでも証明されている。R-spondin3を投与することによって、血管内皮細胞の破綻を抑制し、IRIの抑制に寄与すると予想される。マウス虚血再灌流障害モデルを用い、R-spondin3の効果を検証した。Sham群、Control群、術前30分前にR-spondin3を投与したR-spo群の3群を作製した。30分の虚血後、2時間再灌流した後、肺を摘出し、評価した。Control群では、IL-1β、TNF-α等のサイトカインが高発現していたが、R-spo群では抑制されていた。病理組織学的には、Control群と比較して、R-spo群では炎症細胞浸潤が抑制されていた。Tunnel 染色においては、R-spo群ではControl群と比較して、アポトーシスが抑制されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R-spondin3の効果を、マウス虚血再灌流障害モデルを用い、検証した。Sham群、Control群、術前30分前にR-spondin3を投与したR-spo群の3群を作製した。30分の虚血後、再灌流し、2時間後に摘出肺の評価を行った。Control群では、TNF-α、IL-1βが高発現していたが、R-spo群では抑制されていた。病理組織学的には、Control群と比較して、R-spo群では炎症細胞浸潤の抑制がみられた。Tunnel染色では、Control群と比較して、R-spo群でアポトーシスが抑制されるという結果であった。しかし、研究以外の業務が想定以上に多忙となり、実験を行う時間が予定より少なかった。グラフト内の炎症性サイトカイン、ケモカイン、MAPKsなどのmoleculeをPCR法、ウェスタンブロッティング法で解析を進める。また、病理組織学的に肺障害・血管内皮細胞障害(H&E、免疫染色、蛍光顕微鏡)や細胞 死(Tunnel染色)の評価をさらに行う必要がある。また、学会発表、論文投稿も行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス虚血再灌流障害モデルを用い、R-spondin3の効果の検証をすすめる。グラフト内の炎症性サイトカイン、ケモカイン、MAPKsなどのmoleculeをPCR法、ウェスタンブロッティング法で解析を進める。病理組織学的には、肺障害・血管内皮細胞障害(H&E、免疫染色、蛍光顕微鏡)や細胞死(Tunnel染色)の評価をさらに行っていく。また、学会発表、論文投稿も予定している
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響もあり、あまり実験ができず、動物実験を行う回数が予定より少なくなったため、実験動物、縫合糸、各種抗体の使用が想定より少なかった。また、出張も想定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)実験動物、実験用縫合糸の他、ウエスタンブロッティング・PCR等に使用する各種抗体や、染色用試薬に使用する。
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