研究実績の概要 |
はじめに: 肺癌にて積極的縮小手術をおこなうにあたり、リンパ節転移の有無を確認することが必須である。OSNA法はCK19をターゲットとしており乳癌や消化器癌では高い特異度を示すが、肺癌では正常肺組織のコンタミネーションのため偽陽性を示す可能性が指摘されている。CDNA1 cell division cycle associated 1は非癌組織では胎生期の組織あるいは免疫学的に隔離された精巣にしか発現しない遺伝子であり、肺癌細胞株および非小細胞癌組織では高率に発現している。本研究では、肺癌特異的抗原として期待されているCDCA1をターゲットとしたOSNA法の開発のため、肺癌切除症例のリンパ節におけるCDCA1 mRNA 検出の有用性につき検討した。 方法: 当科にて手術を施行した非小細胞肺癌症例において正常肺および原発巣に加え、該当する肺葉の肺門リンパ節からmRNAを抽出しRealtime PCR法にてCDCA1の発現を定量、その発現量を比較した。組織診断での陰性、陽性と対比し、感度、特異度を判定した。 結果: 96例の肺癌切除症例において、正常肺でのmRNA発現と比較して癌部での発現は有意に高値であり(p<0.001)、臨床病理学的因子ではその発現高値と組織学的グレードおよび脈管浸潤が有意に相関し、術後再発と有意に相関した(RE閾値0.193, p=0.003)。また、肺門リンパ節での解析で、有意に転移リンパ節で発現高値であり、(p<0.001)CK19と比較し良好なマーカーであることが示された。(感度83%, 特異度77%) 考察: CDCA1は肺癌組織において高率に高発現しており、その高発現は予後因子としても有用であった。また、リンパ節転移の分子マーカーとしての有用性も示され、今後縮小手術適応決定のためのリンパ節転移術中迅速診断へと応用できる可能性が示された。
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