研究課題/領域番号 |
17K10796
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅美 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30250830)
|
研究分担者 |
横枕 直哉 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (00418857)
狩集 弘太 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (20648050)
大塚 綱志 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (40464466)
青木 雅也 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (50624996)
中村 好宏 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (60381159)
永田 俊行 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (70611763)
武田 亜矢 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (80794700)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 外科 / 臨床 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
本研究では、肺癌抗体治療のターゲット分子におけるスプライス異常と治療効果との分子生物学的相関について検討している。まずは肺癌の実臨床で使用開始となった抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の治療効果とPD-1、PDL-1におけるスプライスバリアントとの関連を検討中であり、平成29年度は、肺癌細胞株20種と肺癌臨床検体40検体からRNA、cDNAライブラリーを作製、4種類のPD-1スプライスバリアントと、7種類のPD-L1スプライスバリアントを判別するためのプライマーセット5組と7組をそれぞれ設計した。 平成30 年度は、肺癌臨床検体40検体を用いてPCRによるスプライスパターンを検討した。PD-1の結果は、全例で抗PD-1抗体(Nivolumab)のエピトープ部分を含むvariant aを認めたが、一部の症例ではvariant aとdが混在していた。またvariant bとcは全例で認めなかった。PD-L1の結果は、単独のvariantの症例はなく、全例で様々なvariantが混在していた。またvariant dとfは全例で認めなかった。PD-1のvariant dが混在せずにvariant aのみであった症例の頻度と、非扁平上皮非小細胞肺癌を対象とした第Ⅱ相試験(ONO-4538-06 試験)におけるNivolumabの奏効率は近似しており、variant dが混在することでNivolumabが効かなくなる可能性が示唆された。また肺癌にはPD-1のvariant b、cと、PD-L1のvariant d、fは存在しない可能性が高いと考えられた。 これと並行して、非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体も現時点で29症例を集積し、ライブラリーに加え解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、肺癌抗体治療のターゲット分子におけるスプライス異常と治療効果との分子生物学的相関についての検討を、下記研究計画で進めている。①全エクソンアレイによるスプライスバリアントおよびスプライス異常が疑われる遺伝子を同定する。②注目分子のスプライスバリアントを判別するためのプライマーセットを設計し、PCRによるスプライスパターンを推定する。③cDNAシークエンスでのスプライスパターンや、さらにgenomicDNAシークエンスによるスプライス異常(point mutation/insertion/deletion等)を確定する。④スプライス異常により新たに生産される蛋白についてもその機能を推定する。 現在までに、①でまずPD-1、PD-L1に注目し、肺癌細胞株20種と肺癌臨床検体40検体を用いて②を行い、抗体療法の効果と相関している可能性が示唆されるバリアントを絞り込んだ。しかし、予想外にバリアントが多く、プライマーの作製に時間を要した。また、非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体集積にも時間を要した。 現在は、非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体集積もなされたため、この解析を行い、治療効果との関連を検討するとともに、③の準備中である。また、PD-1、PD-L1だけでなく、PD-L2、VEGF、CTLA-4などの検討分子に対しても、プライマーセットを設計し、PCRによるスプライスパターンの推定を行っているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
②に関して、抗PD-1抗体(Nivolumab)投与によるresponse群とnon-response群のPD-1 splice variantを比較することで、抗PD-1抗体(Nivolumab)のエピトープを含むvariant aが存在しても他のvariantが混在していれば治療効果に影響を及ぼすか否かが判明する。その結果を踏まえ、スプライスバリアントが治療効果に影響を及ぼすのであればその先の③の解析に進み、PD1、PD-L1のcDNAシークエンスでのスプライスパターンや、さらにgenomic DNAシークエンスによるスプライス異常(point mutation/insertion/deletion等)を確定することができる。同時に、PD-L2、VEGF、CTLA-4などひろげた検討分子に関して、②を完了し、③に備える。現在は、非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体集積もなされたため、最初に注目したPD-1、PD-L1の③の工程が終了すれば、そのノウハウを元に他の分子に関してはスムースに②・③が行え、解析・検討が進められると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体集積に時間を要したため、この解析と②の結果からスプライスバリアントが治療効果に影響を及ぼすか否かを判明させた上で③を開始することが本年度中にはできず、次年度に繰り越した。幸いにも、非小細胞肺癌に対して抗体療法を行った症例の検体集積はなされたため、次年度に③[cDNAシークエンスでのスプライスパターンや、さらにgenomicDNAシークエンスによるスプライス異常(point mutation/insertion/deletion等)を確定させる。]の検討を行う。
|