本研究ではキャピラリー電気泳動・質量分析装置を用いたメタボローム解析を対象とし、肺癌組織の代謝変化の解析を実施した。従来がんで知られている解糖系の亢進に関して、本データでも解糖系の最終産物である乳酸のがんでの上昇などが確認できた。それ以外にもアミノ酸、核酸、尿素回路など多数の代謝物を定量することができた。特にコリンの上昇が顕著な結果であった。主成分分析の結果、全体の濃度パターンとしてはStageごとに違いがあることが分かった。EGFRの変異の有無など、様々な臨床情報との比較を行い、その影響度を相対的に調べた。これらの解析により肺癌に特異的に変化している様々な代謝経路を明らかにすることができた。 本研究成果は肺がんの代謝異常を調べるために、代謝物を網羅的に解析することができるメタボローム解析を実施したものである。様々な臨床情報と合わせて解析し、従来がんで知られていた特徴的な代謝異常(ワーブルグ効果)を確認するだけでなく、他の代謝経路での様々な代謝の異常を確認することができた。多変量解析によりステージごとに違いなども見られた。今後予後との解析や、血液や胸腔内洗浄液などの解析も行い、体液を用いた診断のマーカーを絞り込むための基礎データとして活用していく。
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