研究課題/領域番号 |
17K10803
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
浦本 秀隆 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90389445)
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研究分担者 |
薄田 勝男 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00324046)
本野 望 金沢医科大学, 医学部, 助教 (30634901)
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
町田 雄一郎 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50460366) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺癌 / 手術 / 再発 / 診断 |
研究実績の概要 |
肺癌の死亡数は1960年以降年代とともに増加し、1998年には悪性腫瘍の中で第1位となった。現在行われている肺癌の治療としては外科治療、化学療法、放射線治療などがある。化学療法に関しては分子標的治療薬また免疫チェックポイント抗体が臨床応用され、その生存に対する効果やQOLも向上している。また放射線治療に関しても新たな治療機器の開発や重粒子線治療などその進歩は目覚ましい。一方、根治という観点からいえば、未だに外科療法、すなわち手術は治療のmainstayである。しかし、最大の問題は、肉眼的、組織学的に完全切除し得て、根治と判断した場合においても、術後再発することが少なくないという事象である。肺癌による2015年の死亡者数予測は悪性腫瘍の中で77200人にも上り、第一位である。この理由は治療抵抗性にある。近年、禁煙活動や健康診断の推進、がん登録の精度向上、分子標的治療薬また免疫チェックポイント抗体の登場などによって見かけ上、全体の治療成績も改善している。しかし、他の癌腫に比べて、古くて新しい問題が残されている。それは術後の再発に関することである。つまり、大腸癌、胃癌、乳癌は根治的な手術をした場合、再発率は一般に低率である。一方、肺癌は極めて早期の小型肺癌を除いて完全切除し得てもなお、一定の割合で再発する。したがって本研究は臨床検体を用いて分子生物学的手法を駆使し、術後再発のbiomarkerを探索し、その臨床応用を目的とする。産業医科大学の検体でのdataと今回赴任した金沢医科大学での検体のvalidationとして前述のTMPRSS4の免疫組織学染色を施行する。この結果の解析によって、異なる施設で再現性があるかどうかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理委員会に研究内容の承諾はすでに得て(整理番号I160)、上記のように、研究を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は以前、肺癌の高転移株の樹立に成功した (特開2015-228860 (P2015-228860A)。この細胞株の分子間の異常の差により93の分子を候補として検出した。また進行癌 (stage IIIA)にもかかわらず、再発なき症例の検体と早期肺癌 (stage IA)にもかかわらず、再発した症例を比較し、1947の遺伝子群をとらえた。さらにその双方の重なりの解析から18分子が再発マーカーの候補として浮上した。そのうちの一つであるTMPRSS4は肺腺癌161例の解析によって免疫組織学的手法にて57.8% (93症例)に陽性を示した。また生存に対する解析ではTMPRSS4陽性は独立した術後再発の予測因子であった ((2016年: 日本呼吸器外科学会 シンポジウム, Chikaishi Y, Uramoto H, et al. Anticancer Res.2016;36:121-7)。まず、乳癌で進行に関与するTSHZ2という分子に着目した。肺腺癌症117例についてTSHZ2免疫染色を行った結果から、非癌部より癌部、非浸潤部より浸潤部でTSHZ2の染色性が低下する傾向にあった。現時点の解析では、TSHZ2染色陽性率が低下している癌のほうが再発率が高いという結果であった。この結果は以前の我々の予想と逆で興味深い。今後は肺腺癌の細胞株を使用し、(1)蛋白レベルでのTSHZ2の発現の有無を確認し、(2)TSHZ2をノックダウン(もしくはノックイン)し、(3)増殖能、浸潤能などの比較を予定している。
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