研究課題/領域番号 |
17K10803
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
浦本 秀隆 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90389445)
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研究分担者 |
薄田 勝男 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00324046)
本野 望 金沢医科大学, 医学部, 助教 (30634901)
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
町田 雄一郎 金沢医科大学, 金沢医科大学氷見市民病院, 助教 (50460366) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺癌 / 手術 / 再発 |
研究実績の概要 |
肺癌の治療としては外科治療、薬物療法、放射線治療などがある。根治という観点からいえば、未だに手術は治療のmainstayである。しかし、最大の問題は、完全切除し得て、根治と判断した場合においても、術後再発することが少なくないという事象である。肺癌は極めて早期の小型肺癌を除いて完全切除し得てもなお、一定の割合で再発する。したがって本研究は臨床検体を用いて分子生物学的手法を駆使し、術後再発のbiomarkerを探索し、その臨床応用を目的とする。我々は以前、肺癌の高転移株の樹立に成功した。この細胞株の分子間の異常の差により93の分子を候補として検出した。また進行癌にもかかわらず、再発なき症例の検体と早期肺癌にもかかわらず、再発した症例を比較し、1947の遺伝子群をとらえた。さらにその双方の重なりの解析から18分子が再発マーカーの候補として浮上した。する。まず、TSHZ2という分子に着目した。肺腺癌症117例についてTSHZ2免疫染色を行うと非癌部より癌部、非浸潤部より浸潤部でTSHZ2の染色性が低下する傾向にあった。またTSHZ2染色陽性率が低下している症例は再発率が高いという結果であり、我々の予想と逆であった。実はEGFR遺伝子変異がある症例ではTSHZ2染色陽性率が高いというデータもあり、関連性を探索している。また、以前、我々はPRDX4発現が低下しているStageⅠの肺腺癌症例は無再発生存率が低いことを見出していたが、PRDX4発現陽性はEGFR遺伝子変異がある症例に多い。微小環境における酸化ストレスに対する防御的役割を担うPRDX4低発現とMIB-1の高標識率の組み合わせはStage I 肺腺癌の無病生存率の予測因子であることも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理委員会に研究内容の承諾はすでに得て(整理番号I160)、上記のように、研究を継続中である。我々は以前、肺癌の高転移株の樹立に成功した (特開2015-228860 (P2015-228860A)。この細胞株の分子間の異常の差により93の分子を候補として検出した。また進行癌 (stage IIIA)にもかかわらず、再発なき症例の検体と早期肺癌 (stage IA)にもかかわらず、再発した症例を比較し、1947の遺伝子群をとらえた。さらにその双方の重なりの解析から18分子が再発マーカーの候補として浮上した。そのうちの一つであるTMPRSS4は肺腺癌161例の解析によって免疫組織学的手法にて57.8% (93症例)に陽性を示した。また生存に対する解析ではTMPRSS4陽性は独立した術後再発の予測因子であった ((2016年: 日本呼吸器外科学会 シンポジウム)。まず、乳癌で進行に関与するTSHZ2という分子に着目した。肺腺癌症117例についてTSHZ2免疫染色を行った結果から、非癌部より癌部、非浸潤部より浸潤部でTSHZ2の染色性が低下する傾向にあった。現時点の解析では、TSHZ2染色陽性率が低下している症例は再発率が高いという結果を得た。この結果は以前の我々の予想と逆で興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
今後は肺腺癌の細胞株を使用し、(1)蛋白レベルでのTSHZ2の発現の有無を確認し、(2)TSHZ2をノックダウン(もしくはノックイン)し、(3)増殖能、浸潤能などの比較を予定している。さらに、実はEGFR遺伝子変異がある症例 (n=153)ではTSHZ2染色陽性率が高い (EGFR wild type: 67.6% vs mutant: 82.4%, p value 0.035)というデータもあり、関連性を探索している。また、以前、我々はPRDX4発現が低下しているStageⅠの肺腺癌症例は無再発生存率が低いことを見出していたが、PRDX4発現陽性はEGFR遺伝子変異がある症例に多い (EGFR wild type: 23.2% vs mutant: 76.8%, p value <0.0001)。微小環境における酸化ストレスに対する防御的役割を担うPRDX4低発現とMIB-1の高標識率の組み合わせはStage I 肺腺癌の無病生存率の予測因子であることも報告した。前述のTSHZ2のin vitroの実験で検証と同時に、SERPINに関しても再発マーカーとなり得るかどうか突き詰めていきたい
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