研究課題
以前に我々が構築したiPSC-pMCに1型IFN遺伝子を導入して1型IFN産生能を賦与したiPSC-pMC(1型IFN-iPSC-pMC)を作製した。1型IFN産生iPSC-pMCは、もとのiPSC-pMCと同等の形態、表面分子(CD11b, CD11c, F4/80, DEC205)発現を示し、GM-CSF依存性に増殖した。RNASeq解析により、1型IFN産生iPSC-pMCは、Irf7, Cxcl10発現など1型IFN応答遺伝子発現を示した。ゲノム編集技術により1 型IFN 受容体(IFNAR-I)を欠損させた1型IFN産生iPSC-pMCはIrf7, Cxcl10遺伝子の発現が消失した。また、抗IFNAR-I抗体で1型IFN受容体を阻害するとCXCL10産生が低下した。これらにより1型IFN産生iPSC-pMCは、オートクラインシステムを用いて、1型IFNに反応し、多様な生物活性を発揮しうることが示唆された。2箇所にがんを移植したマウスモデルにおいて、一方のがんに1型IFN産生iPSC-pMCを局所投与すると、投与部位のみならず遠隔部位のがんまでも抑制した。この効果は、リコンビナント1型IFNを高濃度で投与した場合よりも優れていた。1型IFN受容体(Ifnar-I)欠損マウス、及びIfnar-I欠損骨髄キメラマウス、逆骨髄キメラマウスを用いて解析を行った結果、iPSC-pMCに由来する1型IFNの作用点は、宿主の骨髄由来細胞であることが明らかになった。また、1型IFN-iPSC-pMC投与群では、遠隔がん組織に著しいCD8+ T細胞の浸潤が観察された。このモデルに抗CD8抗体を投与すると遠隔部位のがんに対する抑制効果が消失した。以上より、1型IFN産生iPSC-pMCは、宿主免疫系に積極的に作用して、CD8+ T細胞依存性の抗腫瘍免疫応答を惹起することが明らかとなった。
3: やや遅れている
1型IFN産生iPSC-pMCを局所投与した際のがん組織の遺伝子変動・免疫環境の変動を解析する予定であったが、全てに着手できなかった。
実験系は安定している。遺伝子改変マウスを用いて、1型IFNが作用する細胞の同定を試みる。
2017年度の研究計画に若干の遅れがあった。これに伴って遅れた実験を実施するための研究費(残額)が次年度に使用されることになる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Cancer Lett.
巻: 411 ページ: 182-190
10.1016/j.canlet.2017.09.022.