研究課題
マウスの両脚にがんを移植した担がんマウスモデルの片脚に1型IFN産生能を賦与したiPSC-pMC(1型IFN-iPSC-pMC)を投与すると反対側のがんの成長を抑制した。1型IFN-iPSC-pMC投与群では、遠隔がん組織に著しいCD8+ T細胞の浸潤が観察された。このモデルに抗CD8抗体を投与してCD8+T細胞を除去すると遠隔部位のがんに対する抑制効果が消失した。以上より、1型IFN産生iPSC-pMCは、宿主免疫系に積極的に作用して、CD8+ T細胞依存性の抗腫瘍効果を惹起することが明らかになった。1型IFN-iPSC-pMC投与によるがん微小環境の変化を評価するためにがん組織のRNASeq解析を行った。その結果、1型IFN-iPSC-pMC投与群のがん組織では1型IFN応答遺伝子群の発現が顕著に上昇していた。さらに、Ccl3, Ccl4, Ccl5, Cxcl9, Cxcl10などT細胞浸潤に重要なケモカイン遺伝子、及び Prf1, GzmBなど細胞傷害分子の発現が上昇していた。免疫組織化学・フローサイトメトリー解析の結果、1型IFN-iPSC-pMC投与群のがん組織にはパーフォリン陽性CD8+T細胞が顕著に浸潤していることが明らかになった。FTY720あるいは抗CXCR3抗体を投与すると、反対側がんの抑制効果が消失した。また、治療部位と遠隔部位の両者に全く同じTCR遺伝子配列をもつT細胞が複数存在した。以上より、1型IFN-iPSC-pMC投与後にリンパ節で初期活性化を受けたがん反応性CD8+ T細胞が遠隔部位のがんに浸潤してがんの排除に重要な役割を演じていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
CD8+T細胞依存性の抗腫瘍効果を誘導できることが明らかとなり今後の研究の展開がやりやすくなった。
がん反応性CD8+T細胞の活性化が誘導されるメカニズムを明らかにしてマウスモデルを用いたPOCを取得する。
メカニズムの解明が予想以上に順調に進んだ。次年度には更に詳細なメカニズムの解明に充てたい。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Cell Stem Cell
巻: 23 ページ: 850-858
doi: 10.1016/j.stem.2018.10.005
Stem Cell Reports
巻: 10 ページ: 1935-1946
10.1016/j.stemcr.2018.04.025