研究課題
胸部希少悪性腫瘍のうち、今年度も昨年に引き続いて胸腺腫を中心に細胞株樹立を取り組んだが新規細胞株の樹立は成功しなかった。よってこれまでに利用可能な細胞株および切除標本を用いて胸腺上皮に特異的なたんぱく発現パターンを免疫染色などで評価した。胸腺腫の外科切除検体による遺伝子異常の網羅的な検索を行った。外科検体は80例前後あり、これを用いた次世代シークエンサー等による遺伝子異常の網羅的な検索を試みたものの有望な遺伝子異常、特異的な遺伝子変異等は見つかっていない。外科手術症例の検体採取同意を遺漏のないよう積極的に行い、解析可能な外科検体標本数をさらに増やし、胸腺上皮性腫瘍の遺伝子異常の網羅的解析を継続しなくてはならないと考えている。これまでに手術等で採取された胸腺腫、胸腺癌検体のパラフィンブロック81例を薄切して免疫チェックポイントに関わるPD-L1蛋白の免疫染色を行った。その結果22例が陽性(1%以上染色される)と判定され、B2とB3胸腺腫や正岡古賀分類で3-4期の進行期胸腺腫、および胸腺癌に有意に陽性が多いことが判明した。また、FDG-PET検査におけるFDG集積(SUVmax値)と有意に相関していた。しかしPD-L1陽性は無再発生存率に関する独立した予後因子ではなかった。これ加えて今年度は当院での過去の切除検体240例を用いて新たにPD-L1の追加染色を施行した。その発現率、陽性率と臨床的情報、予後との関連を解析する予定であったが、染色のスコアリングを依頼する予定の病理医の異動などがあり、評価を得ることができなかった。今後も切除検体や胸水を用いて細胞株の樹立を試み、たんぱく発現パターンの解析などを行っていく予定である。
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Annals of Thoracic Surgery.
巻: 107 ページ: 418-424
10.1016/j.athoracsur.2018.08.037