研究課題/領域番号 |
17K10812
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
村川 知弘 関西医科大学, 医学部, 教授 (50359626)
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研究分担者 |
齊藤 朋人 関西医科大学, 医学部, 助教 (10548605)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胸腺上皮性腫瘍 / 網羅的遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
扁平上皮癌は口腔内・咽頭・喉頭・食道・肺・子宮頚部など体外との境界に近接した部位に多く発生することが知られており、病因としてウィルス感染など後天的・外的因子が誘因となっていると理解されている。胸腺癌の多くは扁平上皮癌であるが、胸腺は前縦隔に位置する臓器であり外界への直接の暴露は無く、他部位に発生する扁平上皮癌と比べて、解剖学的局在という観点からは例外的存在である。胸腺癌や胸腺腫などの胸腺上皮性腫瘍は、その発生頻度は年齢とともに増加することが知られているため、後天的誘因の存在を疑わせるが、病因の詳細は不明である。本研究は胸腺上皮性腫瘍の発症にウィルス既感染が関与している可能性を探り、発症機構を解明することを目標としている。 2017年度は胸腺上皮性腫瘍のうち、胸腺扁平上皮癌例に絞り、Nanostring社のn Counter Analysis Systemを用いた網羅的遺伝子解析を行った。コントロールとして胸腺嚢胞切除例の胸腺組織を使用した。胸腺癌では既知のKIT遺伝子のほか、頭頸部扁平上皮癌での発現・予後因子として知られるPRAME遺伝子の発現増強が認められる事が明らかとなった。PRAME遺伝子に関しては現在免疫組織学的な検討の準備中であり、発現部位や胸腺癌予後因子となり得るかを検討していく予定である。また得られたデータのすべての解析は中途であり、今後重症筋無力症の発症で発現増強が疑われているtoll like receptor 7/9シグナルやantiviral interferon type Iなどについても検討を加えていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胸腺癌組織での網羅的遺伝子解析の結果、PRAME遺伝子など、発現が増強している遺伝子を同定したが、本来的なウィルスとの発症関連性の可能性については未だ明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の研究で発現増加が明らかとなったPRAME遺伝子については、免疫組織学的な検討を今後加える。また頭頸部扁平上皮癌のような予後因子となり得るかについても今後検討を加える。 網羅的遺伝子解析については、胸腺癌の他の組織形や、胸腺腫などでも行いウィルスとの関連性について検索をおこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は主にnCounter systemを用いた網羅的遺伝子解析により成り立っているが、解析パネルが高価なために、解析が無駄にならないように検索にかけるパラフィン泡埋切片からのRNA抽出や適切な対象検体の抽出に時間をかけた。そのため実際の解析開始まで時間を要し、2017年度はやや研究費の余剰が生じた。 方法を確立したため、2018年度以降は、いろいろな胸腺上皮性腫瘍を解析にかける事が可能と思われ、当初の研究計画に沿った研究が可能と考えている。
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