研究課題/領域番号 |
17K10814
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長内 俊也 北海道大学, 医学研究院, 助教 (90622788)
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研究分担者 |
中山 若樹 北海道大学, 医学研究院, 講師 (40421961)
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40451439)
数又 研 北海道大学, 大学病院, 講師 (60634144)
鐙谷 武雄 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80270726)
寳金 清博 北海道大学, 大学病院, 教授 (90229146)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソフトマターテクノロジー / X線不透過 / 塞栓物質 / ラット系頸動脈投与 / CT |
研究実績の概要 |
X線視認性を得るためにタンタルパウダーとリピオドールをダブルネットワークゲルに取り込ませることに成功した。臨床で使用されている血管造影装置を使用し、透視確認実験を行なったところ、臨床で使用されている造影剤と遜色のない不透過性が得られた。従来型の塞栓物質は全くX線で視認されず、臨床使用に十分耐えうるX線下での視認性を誇ると考えられた。一方で、新たに開発した塞栓物質はカテーテル通過性の問題があるため、安定して定められた量の塞栓物質をラットへの投与ができるとは言いがたい状況であるが、少なくとも生体での安全性を確認するための実験は可能となった。 ラットの頸動脈からの経動脈投与のモデルに関しては、当初の注入量(1mL)では処置後に高率に痙攣を発症してしまうことが問題となった。検証すると塞栓物質の有無によらず、生理食塩水の投与でも同様な現象がおこるため、注入量を0.2mLにしたところ、安定したモデルの作成に成功した。正確な0.2mLの注入のためにロック付きの1mLのシリンジを使用したところ、投与が可能となった。現在従来のEmbosphereと塞栓物質を頚動脈から投与して、安全性を比較しているが、初期段階の結果では炎症反応はみられていない。 また、当施設で動物用のCTが撮影できることとなったため、頸動脈からの投与後に頭部CTを撮影してみたところタンタル入りのゲルはCTで高信号を示したのに対して、Embosphereは全く視認できなかった。このことから、実際に塞栓術を行なったのちにも頭部CTによって塞栓物質の分布が確認できる可能性があり、また従来の粒子状の塞栓物質では術後の体内動態を検証することが不可能であったため臨床的に有意義な結果であったと考えられた。 さらに別のX線視認性塞栓物質の候補としての金ナノ粒子をゲルに取り込ませることにより粒子の作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線不透過を得る粒子の開発が遅れていた。 当初予定していた、ゲルへのミネナリゼーションだけでは十分な視認性を得ることができなかったため、種々の工夫をして本年度の後半にようやくX線下での視認性が得られる粒子の開発に成功した。今後実験のスピードが促進されると期待されるが、現時点ではやや遅れている結果となった。 またブタでの実験を行う予定となっていたが、ラットでの実験が終了しておらず、まだ行うことができていない。ラットの実験が落ち着き次第、こちらの実験に関しても随時進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
X線不透過の粒子の開発には成功したため、これをもとに生体内での安全性を評価していく。もっとも大きな課題としては、カテーテル内の塞栓物質の通過性が従来の塞栓物質と比べて劣ることで有り、これを改善し、従来品と同等のカテーテルの通過性を得るため、乳化剤を用いた処置をする予定である。乳化剤はイントラリポスやプロポフォールなどの臨床で静脈投与されている薬剤にも使用されているものを使用することによって、安全性が担保されるものと考えている。 並行して進めている金ナノ粒子に関しては、今後タンタルおよびリピオドールを用いた塞栓物質と同様の手法で、X線透過性確認とカテーテルの通過実験およびラットを用いての生体内での安全性を証明することとする。 頭部CTに関しては当初計画に予定していなかったが、臨床上の有用性を示すための非常に有用な手段であるため、今後、従来型の塞栓物質との比較実験をそれぞれの群でN=6で予定している。 ラット頚動脈からの塞栓物質の投与方法に関してはすでに確立しており、塞栓物質の改良が進めば 実験の進展は促進されると期待される。今後はラットを用いての生体内の安全性を速やかに確認したのち、ブタを用いた実験を行うことを期待している。ブタモデルに関しては当初の予定通りにブタの腎動脈にカテーテルを留置し、塞栓物質を投与するとによって、視認性の確認をすることと、病理組織学的評価を行うこととする。特に新たなモデルではなくカテーテル留置を行い注入するだけであるので乳化剤による塞栓物質の改良が済み次第実行できると考えられる。
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