研究課題/領域番号 |
17K10815
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤村 幹 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00361098)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00217548)
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
坂田 洋之 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80722305)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | もやもや病 / 血管新生 / 幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
もやもや病における多能性幹細胞MUSE細胞の血管新生促進の概念実証を行うことを目的に以下の検討を継続して行った。もやもや病に対する間接血行再建術による血管新生誘導モデルを確立する目的で、昨年度につづきマウス/ラットに対して片側総頚動脈閉塞と二期的対側内頚動脈閉塞による慢性脳虚血を誘導した。その後に間接血行再建術を施行し側頭筋から脳表に向かう血管新生と免疫担当細胞の集積を確認した。もやもや病疾患感受性遺伝子RNF213遺伝子欠損マウスにおいて免疫能異常が示唆されたことを踏まえて(Kanoke et al. Brain Res 2016)、M2マクロファージ関連因子sCD163ならびに自己免疫関連マーカーCXCL5について患者血清における発現を検証し、RNF213遺伝子多型との関連も検証した。もやもや病患者ではsCD163, CXCL5とも健常人と比較して有意に高値を示しもやもや病病態における自己免疫をはじめとする免疫異常が示唆された(Fujimura et al. Brain Res 2019)。さらにもやもや病患者より採取したクモ膜を用いてMUSE細胞の表面マーカーを標的とした免疫組織染色を行い、患者クモ膜における内因性MUSE細胞の遊走を確認した。 以上より、もやもや病患者クモ膜において内因性MUSE細胞の遊走が見られることと、もやもや病患者における得意な免疫環境が示唆され、MUSE細胞を用いた血管新生を促進する上で免疫反応の制御が重要であることが再確認された。MUSE細胞については培養したヒト間葉系幹細胞に対して、SSEA-3/CD105抗体を用いたMACSによる分離を行い効率良いMUSE細胞の分離方法を既に確立しておりMUSE細胞を用いたもやもや病を模擬した動物モデルにおける血管新生促進の検証を現在推進している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性脳虚血と間接血行再建術モデルを組み合わせ、患者に対する間接血行再建術を模擬したモデルを確立した。もやもや病患者血清中のM2マクロファージ関連因子sCD163ならびに自己免疫病態関連因子CXCL5の有意な上昇といった特異的な免疫能異常を見出したことより、MUSE細胞移植による血管新生を誘導する上で免疫環境の制御が有力な治療戦略となることを示唆した。さらに患者クモ膜における内因性MUSE細胞の遊走を確認したことにより、今後の患者に対してMUSE細胞移植を推進するにあたり重要な知見を得た。 一方、実際の慢性虚血脳に対する間接血行再建術におけるにMUSE細胞移植実験からは有意な結果がまだ得られておらずMUSE細胞移植における血管新生促進の評価を推進する必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、従来の頭蓋外内バイパス術が施行困難な重症もやもや病患者に対してMUSE細胞移植による血管新生療法を推進するにあたり、内因性MUSE細胞の中枢神経系への分布を検証する必要がある。脳血管の検体採取はごく限られているが、これまで行ってきたクモ膜検体の検証に加えて硬膜、バイパス術で得られる微細な血管壁についても免疫組織学的検討を進める予定である(広南病院倫理委員会承認済)。また動物実験においては、従来のラット・マウスに加えて、もやもや病疾患感受性遺伝子RNF213遺伝子欠損マウスも用いて、慢性脳虚血・間接血行再建術モデルにおけるMUSE細胞移植の効果、MUSE細胞の動態について検証予定である。
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