研究課題/領域番号 |
17K10819
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丸島 愛樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40722525)
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研究分担者 |
プエンテス サンドラ 筑波大学, システム情報系, 助教 (00725765)
平山 暁 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (20323298)
鈴木 謙介 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20400674)
鶴嶋 英夫 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50315470)
滝川 知司 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (60450227)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RNP / 脳虚血再灌流障害 / 血栓回収療法 / 神経血管ユニット保護 / 脳梗塞 / 血液脳関門 / ナノ粒子化活性酸素消去剤 / フリーラジカル |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が開発したナノ粒子化フリーラジカル消去剤 RNP (Nitroxide Radical-containing Nanoparticles)を、閉塞脳動脈の再開通時にカテーテルより直接脳虚血領域へ動脈投与することで、効果的にROSを消去し、脳虚血再灌流障害による出血性合併症や脳梗塞拡大を抑制する、新たな脳保護療法の開発を目指している。 2018年度は、①RNP至適投与量の検証、②脳内分布の評価、③既存薬エダラボンとの比較試験、を行った。①RNPの至適投与量をDose response curveで評価したところ、9mg/kg (17mM)が最も生存率が高く、濃度依存性に脳梗塞体積を縮小し、神経症状を改善させることを明らかにできた。②ローダミン標識したRNPを用いたRNPの脳内分布の評価では、脳梗塞周辺部のペナンブラ領域において、RNPは脳血管内皮、及び、神経細胞内の細胞質に最も多く分布していることを明らかにした。このことは、RNPは破綻した血液脳関門を通過し、虚血環境にある神経細胞ではRNPは細胞膜から細胞質に取り込まれ、ミトコンドリアの酸化ストレスを制御している可能性を示唆した。③既存薬エダラボンとの比較試験では、マウス一過性中大脳動脈閉塞(1時間虚血)再開通後に、RNP9mg/kg(n=20)またはエダラボン3mg/kg(n=20)を投与した。その結果、マウスの生存率は、RNP群が有意に高かった。Longa scoreによる神経症状の評価では、RNP群において有意に神経症状が軽度であった。本研究により、RNPは脳主幹動脈閉塞症などの重症脳梗塞の脳虚血再灌流障害を抑制し、死亡率を低下させ、神経症状を軽減する可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた①RNP至適投与量の検証、②脳内分布の評価、③既存薬エダラボンとの比較試験の研究は順調に進展したため
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今後の研究の推進方策 |
RNPの脳内分布、及び神経血管ユニット保護効果ついて、血管内皮、血管周皮、神経細胞、アストロサイト、ミクログリアの酸化ストレス評価と解剖学的、形態学的評価の解析を進める。特に、RNPは血管周囲のアストロサイト、及びミクログリアへの周囲に集積も認めた。前者ではRNPがアストロサイト終足を含めた血液脳関門の保護効果を発揮している可能性を示唆し、後者では、RNPが神経障害型ミクログリア(M1)と神経保護型(M2)と言われているミクログリアの極性転換に影響を及ぼしている可能性があり、今後、更なる解析を行う予定である。また、RNPで治療した脳梗塞組織の抗酸化能を、電子スピン共鳴法(EPR)による脳の各種活性酸素種(・O2-,・OH,・ROO,・RO,⊿1O2)に対する抗酸化能測定により行い、エダラボンと比較する。将来的には、GMP基準のRNPの製造開発及び品質管理システムを構築すること、RNPの非臨床POCを確立すること、非臨床試験にてRNPの安全性を確立すること、これらの基礎研究とその後の治験・実用化戦略のために企業との連携、共同研究契約を行うことも目標としている。2018年10月18日PMDA RS総合相談を実施しており、First in Human試験に向けて、十分なRNPの安全性と有効性を確立すること、企業とのマッチング、連携を進めることを確認した。RNPを再灌流直後に頚動脈カテーテルより直接動脈投与することで効果的にRNPを脳虚血巣で働かせる脳保護療法の開発は、脳梗塞に対する急性期再開通療法後の虚血再灌流障害による脳梗塞増悪や出血性合併症を解決し、Therapeutic time windowを拡大できる新たな治療法として期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNPの脳内分布、及び神経血管ユニット保護効果ついて、血管内皮、血管周皮、神経細胞、アストロサイト、ミクログリアの酸化ストレス評価と解剖学的、形態学的評価の解析の進捗が順調であったため、研究費を効率よく使用することができた。そのため未使用額が生じたが、2018年度の成果として、RNPの血管周囲のアストロサイト、及びミクログリアへの周囲に集積は新たな知見であり、2019年度は2018年度の未使用額と合わせて更なる解析を進める予定である。 RNPがアストロサイト終足を含めた血液脳関門の保護効果を発揮している可能性については、エバンスブルーを用いて脳虚血再灌流後の血液脳関門の破綻を評価し、同部位のアストロサイト終足を含めた血液脳関門の形態学的評価を行う。ミクログリアの評価については、RNP群とコントロール群における、神経障害型ミクログリア(M1)と神経保護型(M2)の発現、動員を評価し、ミクログリアの極性転換とその役割について検証する。RNPで治療した脳梗塞組織の抗酸化能を、電子スピン共鳴法(EPR)による脳の各種活性酸素種(・O2-,・OH,・ROO,・RO,⊿1O2)に対する抗酸化能測定により行い、エダラボンと比較する。
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