研究実績の概要 |
本研究では, 中枢神経系疾患に対して我々がこれまで研究してきた電気刺激療法 (Shinko A, et al., PLoS One. 2014, Kameda M & Taylor CJ, et al., Transl Psychiatry 2012, Morimoto T, et al., Cell Transplant. 2010, Baba T, et al., STROKE 2009) を行うことで,内因性の神経幹細胞を活性化させ,脳が元来備え持つ組織修復作用を効果的に誘導することを目的としている. 昨年度は成体ラットに対して両側頸動脈を永久結紮させ慢性低灌流モデルを作成し,虚血負荷(慢性低灌流)後の生体がもつ組織修復作用を,高頻度刺激さらにはLTPを誘発させることでより効率的に誘導させることができることを報告した(Takeuchi et al., Front Aging Neurosci. 2018). 今年度は,neonateラットに対して頸動脈の閉塞と低酸素負荷をかけて脳性麻痺モデルを作成し,電気刺激実験を行うことを目標とした.severeすぎる虚血が作成されると,電気刺激を与えてもfield potentialが得られないため,neonateを用いた脳性麻痺モデルに対する電気刺激実験を実現するためには,適切な虚血負荷や低酸素の濃度といったparameterを解明する必要があった.そのため,これらのparameterについて条件をふって比較検討した.結果,手術手技的には脳性麻痺モデルは作成できた.しかし, 同じ虚血負荷条件であってもTTC染色を行ってみると, 虚血負荷の程度にばらつきが多く,なかなか安定したサイズの梗塞巣を確認するに至らなかった.また,行動学的にも麻痺の程度にばらつきを認めた.そのため, 成体モデルで培った慢性低灌流モデルにおけるLTPの誘発を, neonateの脳性麻痺モデルへ応用するというステップに進むことはできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度,成体モデルでは両側頸動脈結紮によって慢性低灌流モデルを作成し,電気刺激を与えることで治療効果を得て,その結果を論文化できた. 一方, 今年度は脳性麻痺モデルに対する電気刺激実験を行うに適した, 安定した適度な虚血負荷が加わったモデルを作成するに至らなかった. 一方で,脳性麻痺モデルとは別に電気刺激を用いた中枢神経系疾患に対する治療効果を検討するプロジェクトとしてもう一つ走らせた,パーキンソン病モデルに対する迷走神経刺激に関する実験では一定の治療効果が確認できたので,こちらの治療効果とそのメカニズムに関連するところをさらに検討し, 論文化へ向けて実験を進めていきたい.
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