研究実績の概要 |
脳動脈瘤破裂における炎症性変化との関連性を報告してきている(Yagi, Neurosurgery 2010、Matsushita, Hypertension, 2012、Miyamoto, 2017, JCBFM, Yamaguchi, JNS。脳動脈瘤予防に対する有効な薬物治療を確立するために申請者らは独自に確立したエストロゲン欠乏脳動脈瘤ラットモデルを確立し、様々な薬効の承認薬を用いて薬物治療効果を検討した結果、降圧薬のミネラロコルチコイド受容体阻害薬の有効性を見出し、臨床においてパイロット試験を行い、9㎜以下の未破裂脳動脈瘤に対して破裂抑制効果が認められることを初めて報告した(J Stroke Cerebrovasc Dis, 2018)。一方、破裂予防のために、破裂にいたる病態を脳動脈瘤破裂モデルにおいて解析し、破裂しやすい血管壁ではIL-1β, MMP-9の高い発現が見られることを報告した。IL-1βやMMP-9の活性化はinflammasome(NLRP3, ASC, Casp-1の複合体)の活性化が関与することから、脳動脈瘤破裂とinflammasomeとの関連性を調べた。エストロゲン欠乏状態ではエストロゲン受容体α(ERα)の発現低下に伴い、inflammasomeの発現増加を認めた。現在、脳血管内皮細胞や平滑筋細胞においてエストロゲン欠乏状態では酸化ストレスに関連した分子の増加に反して、抑制系の分子が低下することを明らかにしており、結果的にinflammasome構成分子NLRP3の発現増加となることを見出している。これまでの経過をまとめ2019年2月に米国で開催されたInternational Stroke Conferenceで発表しており、現在、論文化に向けて準備を進めている。
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