研究課題
脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は、一旦発症すると予後不良で、現在の医療水準でも社会復帰率が50%に満たない重篤疾病の一つであるが、現時点で、脳動脈瘤破裂予防の有効な薬物治療はない。申請者らは閉経期女性において脳動脈瘤発症が高いとする疫学的な調査結果に基づき、独自でエストロゲン欠乏状態の脳動脈瘤モデル確立し、さらに血行動態変化を加えることにより、ヒトに類似した部位が破裂する脳動脈瘤破裂モデルを新たに確立した。一方、他の研究グループから破裂脳動脈瘤の約50%の血管壁に歯周病菌が存在するという報告がなされた。歯周病菌は動脈硬化性疾患や脳梗塞の病態にも関与すると考えられるが、脳動脈瘤との関連性の詳細は不明である。本研究では脳動脈瘤破裂動物モデルにおいて歯周病菌の脳動脈瘤の増大・破裂への影響を明らかにし、病態に関与する分子機序を解明し、治療の標的を探索することとした。臨床では脳血管障害例において歯周病予防に向けて口腔ケアの意義を明らかにすることを目的とした。脳動脈瘤破裂ラットモデルにおける歯周病菌LPSの影響を検討13週齢雌性ラットを使用し、エストロゲン欠乏、血行動態変化や高血圧を誘導するために卵巣摘出、一側総頸動脈結紮、高食塩負荷、両側後腎動脈の結紮を行うと、12週間後の観察ではヒトと類似した前交通動脈(ICA, Acom)および後交通動脈 (P1)に破裂が認められ、E.coli LPS投与より、歯周病菌Pg LPS投与により高い破裂頻度を示した。vascular corrosion cast (脳血管の鋳型)を作製して脳動脈瘤の発生頻度、サイズを評価するとPg LPS、投与群で高頻度の発生が認められた。現在摘出脳血管での定量RT-PCRの解析や免疫組織学的評価を行っている。一方、脳血管由来のヒト平滑筋培養細胞において、歯周病菌体LPSによる直接的な平滑筋への影響を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
独自に確立した脳動脈瘤破裂モデルを用いて、歯周病菌Pg LPS投与による影響を解析した結果、歯周病菌投与で破裂頻度が増加することを確認しており、破裂のメカニズムに関連する分子を解析中である。
歯周病菌により増悪される炎症性反応分子を同定する。臨床的に歯周病の重症度と脳動脈瘤の関係や歯周病の重症度に関連する歯周病菌を探索し、破裂のメカニズムに関連すると思われる炎症性関連分子や細胞外マトリックス崩壊分子への影響を解析していく。
(理由)実験の結果が予測されたものと異なったため、購入物品の変更とその必要期間の変更が生じた。(使用計画)試薬等の物品費として次年度の研究にて使用する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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