研究課題/領域番号 |
17K10838
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中川 慎介 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (10404211)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / LPA / S1P |
研究実績の概要 |
血管や免疫系など多様な生理作用を示すリゾリン脂質の中から、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)とリゾホスファチジン酸(LPA)に焦点を当て、血液脳関門 (Blood-Brain Barrier、BBB)に与える影響を検討した。S1Pはin vitroでBBBのバリアー機能を低下させ、この低下作用には、タイトジャンクション(TJ)構成タンパク質であるZO-1とoccludinの発現低下が関与することが判明した。また、これまでの検討で、in vitro BBB model に低酸素負荷を行うとS1Pシグナルが亢進し、BBB機能を低下させることが判明しいる。そこで、マウスの脳梗塞モデル(MCAO model)を用いたin vivoでの検討を行った。MCAO処置マウスではS1Pの産生酵素であるSphk1と、細胞外輸送担体であるABCA1の発現が亢進しており、S1Pの産生が亢進していると考えられた。S1P細胞外輸送担体であるABCA1の阻害作用を持つプロブコールを用いて、MCAOに対すS1Pシグナル抑制による保護効果を検討したところ、MCAOによる脳梗塞巣やBBB脆弱性はプロブコールの投与により抑制された。脳梗塞後のS1Pシグナルの抑制はBBBの保護につながると考えられる。S1Pに加え、LPAの内皮細胞のバリアー機能への影響をin vitroで検討した。内皮細胞にLPAを負荷するとバリアー機能の指標である経内皮電気抵抗が減少し、TJタンパクであるclaudin-5の発現の乱れが観察された。また、バリアー機能の低下はROCK阻害時であるY27632により阻害された。また、内皮細胞にはLPA6受容体が発現しており、LPA6に対するsiRNAを用いた検討により、LPAのバリアー機能にはLPA6受容体が関与していることが判明した。以上の事からLPAはBBB機能を負に調節することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S1PおよびLPAのBBB機能に対する作用をin vitroで検討し、S1PやLPAシグナルの亢進がBBB機能を低下させることを発見した。また、虚血再灌流障害においてS1Pのシグナルを抑制することがBBB保護につながることをin vivoでも確認した。更に、脳血管保護効果を持つ薬剤候補として既存薬であるプロブコールを発見したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様の評価を継続する。更にこれまで蓄積したデータを取りまとめ成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに使用したが、小額の端数が生じた。 繰越使用額が小額のため、次年度に使用する。
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