研究課題/領域番号 |
17K10840
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
諸藤 陽一 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40437869)
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研究分担者 |
藤本 隆史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (00712085)
出雲 剛 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (40343347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / 3次元モデル / ぺリサイト / 初代培養細胞 / 脳血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
灌流型3次元血液脳関門モデルの開発においては、内皮細胞、ペリサイト及びアストロサイトを培養した上で灌流することに成功した。不死化ヒト細胞、ラット初代培養細胞、ヒト初代培養全てにおいて、モデル内に細胞を生着、培養できることを確認した。我々のモデルは以下の特徴を有している。①培養液を灌流することにより内皮細胞及び他の培養細胞にシェアストレスを再現、②血管側・脳側ともに培養液を灌流させることにより、血管腔側だけでなく脳側の灌流液の解析も可能となり、脳内サイトカイン動態の把握も可能とした。 二次元血液脳関門モデルにおいて、ペリサイトが肺癌の脳転移に拮抗的に働いていることを見出し、英文学術誌に報告した(Fujimoto T. et al, Cellular and Molecular Neurobiology, 2019)。ペリサイトが血液脳関門機能を強化することは広く知られているが、我々はペリサイトが癌細胞の脳転移に拮抗的に働いていることを世界で初めて示した。この結果は今後、癌の脳転移を考える上でペリサイトをターゲットとした治療戦略を考える必要があることを示唆している。免疫チェックポイント阻害薬を含め、癌の原発巣治療が飛躍的に進んでいるなか、ペリサイト機能を強化することで脳転移を予防することができれば、癌患者のQOL向上に大きく貢献できると思われる。 また、本研究過程において、脳血管内皮細胞においては、低い継代数(P2-4)であってもその脳血管内皮細胞としての特徴(tight junction機能発現)が失われることを証明し、英文学術誌に投稿中である。この結果は現在世界で広く使用されている血液脳関門モデルの一部が不適切であることを示しており、薬剤開発の現場での注意を喚起するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
灌流型3次元血液脳関門モデルの開発は順調に進んでおり、十分に実用可能な段階に到達している。しかし、実験で使用する薬剤及び細胞がCOVID-19の影響で一部調達できなかったため、一部の実験が施行できなかった。今後は2次元モデルで得られた結果との比較を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々のもつ血液脳関門における初代培養細胞を使用した血液脳関門モデルの技術と米国ワシントン大学、ハンガリー科学アカデミーの学際的ネットワークを融合させることで、研究を飛躍的に発展させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎COVID-19の世界的流行による実験使用器材の手配不能などにより、実験経費使用の一部を見送った。次年度の実験経費の一部として使用予定である。
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