くも膜下出血は、約半数の患者が初回の出血で死亡する重篤な疾患で、出血や頭蓋内圧亢進による急性期の直接的な脳障害、2-3週間内に生じる脳虚血などの遅発性脳障害により、機能予後をも悪くする。近年、炎症病態が脳虚血に関与している事が分かってきており、当研究代表者はくも膜下出血や遅発性脳障害においても同じような炎症のメカニズムが関与しているのではないかとの着想を得て、炎症性サイトカインのうち脳梗塞での関与が明らかとなったIL-23、IL-17をターゲットとし、以下の4点について研究を行ってきた。 1. IL-23が、くも膜下出血急性期の脳浮腫に対する増悪因子であることを明確にし、その分子機構を明らかにする。2. IL-23が、遅発性脳虚血にも関与しているかどうかを明らかにする。3. IL-17が、くも膜下出血後の脳浮腫、その後の遅発性脳虚血に関与しているか明らかにする。4. くも膜下出血と遅発性脳虚血の新たな治療法の可能性を明らかにする。 最終年度に得られた結果の概要は、従来脳梗塞の炎症メカニズムで示されてきたIL-23 に端を発するγδT細胞誘導・IL-17までの経路とは別の、IL-23が脳浮腫を軽減するまでの経路が存在することが示唆された、ことである。 治療法までも見据えた本研究は未だ途上であり、炎症性サイトカインを標的として研究を遂行していき、くも膜下出血後の病態解明と治療法の開発に貢献したいと考えている。
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