研究課題/領域番号 |
17K10846
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
瀬原 吉英 自治医科大学, 医学部, 講師 (50721156)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 一過性全脳虚血 / スナネズミ / ポリコーム群タンパク質 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
本研究では、一過性全脳虚血後に観察される海馬のニューロン新生について、その制御機構と役割を明らかにすることを目的として、遺伝子の転写抑制に関わるポリコーム群タンパク質に着目している。ポリコーム群タンパク質は、ヒストンメチル化を介して遺伝子の転写抑制を行い、胎生期の神経新生や神経回路網の形成、癌細胞の増殖等に重要な役割を果たすことが知られている。 スナネズミの5分間全脳虚血モデルを用い、海馬歯状回におけるポリコーム群タンパク質の経時的な変化を確認したところ、ポリコーム群タンパク質の中でも特にEzh2が虚血3日後にピークを有する増加を示していた。一般的に海馬歯状回における新生ニューロンはsubgranular zoneより発生するが、本研究では神経幹細胞のマーカーであるSOX2とEzh2の蛍光2重免疫染色を行ったところ、subgranular zoneにおいて共陽性であった。また、成熟途中のニューロンのマーカーであるPSA-NCAMとEzh2の免疫染色においても、ともに共陽性であった。Ezh2は成熟したニューロンのマーカーであるNeuNとも共陽性であり、Ezh2が神経幹細胞から成熟したニューロンにおけるすべての成熟段階において発現していることが明らかになった。 次に、海馬歯状回におけるニューロン新生においてEzh2が果たす役割を明らかにするため、まずEzh2に対する低分子干渉RNAを搭載したアデノ随伴ウイルスベクターを作製し、4週齢のスナネズミに定位脳固定装置下に注射した。6週齢で全脳虚血手術を行い、9週齢で断頭した。現在、切片を作製し組織学的検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の年度においてはポリコーム群タンパク質の虚血後海馬における経時的変化や空間的分布を明らかにすることが出来た。現在、次の段階であるポリコーム群タンパク質のノックダウンの影響を研究中であり、当初の計画書通りの進展状況であるため、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、Ezh2に対する低分子干渉RNA搭載アデノ随伴ウイルスベクターを定位脳固定装置下に投与した海馬における新生ニューロンの状態を観察する。Ezh2のノックダウンによりニューロン新生に変化が認められた場合、それがどのような標的遺伝子によってもたらされるものかを明らかにするための検討を行う。具体的には、Ezh2ノックダウンを行った海馬について次世代シークエンサーで遺伝子発現パターンを解析する。この結果から得られた候補遺伝子についてノックダウンを行い、新生ニューロンにおける影響を検討する。 また、新生ニューロンがどのような機能を持つのかはほとんど明らかにされていない。電気生理学的な研究を合わせて進める(連携研究者・同志社大学橋本谷祐輝准教授)。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では北米神経科学会に参加予定であったが、実験の進捗状況を考えて参加しなかったため、その分の旅費として計上していた助成金が次年度使用額となった。今年度の研究で予定している次世代シークエンサー関連に要する費用はもともと計上していた予算より高額で、その費用として使用予定である。
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