研究課題
本年度は、実際のくも膜下出血(SAH)の血中、髄液中に発現するmicroRNAの経時的変化を捉え、重症度や脳血管攣縮、臨床経過と比較することを目標に研究を進めた。コイル塞栓術を施行した動脈瘤破裂によるSAH患者(n=8)の血液および髄液を経時的にサンプリングした。まず、SAH発症後の早期において変動するmiRNAの網羅的探索を行うために、発症1日目(day1)と3日目(day3)の髄液および血清サンプルからexosomeを抽出し、exosome中のtotal RNAに含まれるmiRNAのmicroarray解析を行った。さらにRT-PCR法を用いて、特異的変動を示したmiR15aおよび関連分子kruppel-like factor 4(KLF4) mRNAの発現解析を行った(n=6)。2500以上の遺伝子のmicroarray解析の結果、血清中、髄液中いずれにおいても、day1からday3にかけて、2倍以上もしくは0.5倍以下の変動を示した遺伝子は、合計12遺伝子存在した。この中でangiogenesisに関与すると考えられるmiR15aの経時的発現をRT-PCRを用いて解析したところ、髄液中ではday3をピークに、血清中ではday5をピークに有意に上昇した。また、miR15aを介して抗増殖、抗血管新生作用を有すると考えられるKLF4のmRNAは、髄液中ではday1に、血清中ではday3に有意に低下した。髄液中、血中のいずれにおいても、KLF4の発現はSAH後早期に低下し持続したが、その一方でmiR15aの発現はKLF4の変化に続き一過性の上昇を示した。KLF4の低下はSAH後のvascular proliferationやangiogenesisに寄与している可能性があり、miR15aはKLF4と相互作用することによってこの調節に関与している可能性が示唆された。
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