研究課題/領域番号 |
17K10849
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
竹田 理々子 帝京大学, 医学部, 教授 (70649847)
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研究分担者 |
田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (50456563) [辞退]
佐藤 智仁 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (00799166)
栗田 浩樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70262003)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒト脳動脈瘤壁 / 慢性炎症 / 質量分析 / DESI-IMS法 / アラキドン酸 |
研究実績の概要 |
今日、脳動脈瘤は脳血管壁の慢性炎症であると理解されている。動脈瘤形成,破裂の機構に関し幾つかの脂質や脂質メディエーターの関与の可能性が示唆されているが、ヒトの脳動脈瘤壁において網羅的な脂質解析が行われたことはまだない。今回我々はイメージング質量分析法(IMS)の中でも最近新たに発展し、従来よりも簡便なdesorption electrospray ionization (DESI)法を用い、ヒトの脳動脈瘤壁における脂質の可視化を行うことを目的とした。脳動脈瘤クリッピング術後に切除したヒト脳動脈瘤壁(破裂6, 未破裂5例)を対象とし、DESI-IMSで解析を行った(以降2019年度成果)。その結果、網羅的脂質解析により破裂瘤ではアラキドン酸(AA)を有意に認めたが、未破裂瘤では全例で検出されなかった。AA合成の前駆物質である、リノレイン酸とオレイン酸、更にはAA含有リン脂質も未破裂瘤ではノイズレベルでしか認められなかった。破裂検体におけるAAとその前駆物質の空間分布を免疫染色で比較したところそれらの主体は血栓上であったが、未破裂脳動脈瘤壁上では免疫染色と比較しても全くAA、その前駆物質ともに検出されていなかった。近年、脳動脈瘤の形成や破裂に関与する炎症性メディエーターとしてCOX-2が注目されている。COX-2はAAからプロスタグランジンH2を合成するが、COX-2を阻害するNSAIDs投与により脳動脈瘤形成・破裂が減じたという報告が多々なされており、未破裂瘤壁上にAAが検出されなかったという本結果とは一見相容れないように思える。このため同未破裂検体のCOX-2免疫染色を施行したが、残念ながら有意な結果を得ることはできなかった。本結果の解釈にはまだ不明な点があるものの、COX-2抑制と脳動脈瘤形成・破裂抑制効果の関連を更に検討する際に新しい知見となりうるかもしれない。
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