本研究の目的は、低出力デスクトップシークエンサーを用いて最低限の標的遺伝子の検索を行うことで、2週間で神経膠腫の治療・予後判定に必要な遺伝子プロフィルが取得可能なクリニカルシークエンス基盤を作成することである。脳腫瘍検体の適切な取扱い手順書の作成から、最終的には遺伝子プロファイルに臨床情報を加味して遺伝子診断報告書を作成する解析ソフトウェアの開発を行うことで、臨床検査室で実施可能な解析パイプラインを樹立することで、脳腫瘍の個別化診断・治療の推進を行う。今年度は脳腫瘍検体(神経膠腫100例、Grade 1-4)のホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)、凍結検体、及び凍結検体からPAXgene Tissue System;(QIAGEN)にて再固定したPFPE検体からDNA、RNAを抽出し(全自動核酸抽出装置QIAsymphony)、その品質をバイオアナライザ―(;Agilent TapeStation)、Qubit;Fluorometer(ライフテクノロジー)等を用いて検証を行った。 同時に、全てHE染色標本を作製し、組織像の検証も行った。 1)クリニカルシークエンスのための脳腫瘍検体の処理、保管方法の検証 ①検体の固定方法(ホルマリン及びPAXgene)、固定時間(2時間~10日)、核酸抽出方法⇒ PAX検体の方が有意に良好なDIN値を得ることが出来たが、固定条件が3日以内のFFPE検体であれば、十分に解析が可能であることが判明した。 ②病理標本の形態情報との整合性の検証を含む病理検体処理の手順書の作成⇒ 病理検体を用いたシーケンスの標準作業手順書を完成させた。 2)遺伝子パネルのバージョンアップ⇒TERTプロモーター領域のSNVの検出効率を上げるために、プローブデザインの見直しを行った。
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