研究課題
本研究は神経膠腫のうち、最も予後不良な疾患である膠芽腫を病態を解明する目的で、近年注目されてている遠隔再発に関与する分子マーカーを明らかにしようというものである。まず初発膠芽腫167例の画像を解析し腫瘍の局在とくにSub ventricular zone(SVZ)との関係を検討した。さらに幹細胞マーカーCD133の発現を検討し、それらの因子が膠芽腫の再発形式に関与しているか否かを解析した。結果CD133の高発現は腫瘍の遠隔再発に強く関連していた、一方でSVZの局在は腫瘍の再発と直接関与はしなかった。続いて初発膠芽腫153例を用い解析を行った。診断時の画像が多発性のもの、初回再発・2回目の再発のいずれかが遠隔再発であったものを多発・遠隔再発群と定義した。膠芽腫において最も高頻度に認められる変異であるTERTプロモーターに着目し解析すると変異型92例は有意に野生型に比較し多発・遠隔再発例が多い傾向にあった。その他遠隔再発に関与する因子を解析したところ、PTEN遺伝子の欠失、CD133の高発現が関連因子として考えられた。またTERTプロモーター変異群に着目してその他の遺伝子異常との関連を検討すると変異例ではEGFR CDKN2A PTENといった膠芽腫に高頻度に認められる遺伝子異常と強く相関を認めたのに対し、野生型はPDGFR CDK4 TP53といった全く別の遺伝子異常と強く相関していた。またTERTプロモーター変異群は独立した予後不良因子であり、その浸潤性が予後不良に強く相関している可能性が示唆された。以上より、TERTプロモーター領域の変異を持った膠芽腫は、多発性・浸潤性に発育し予後不良であり、野生型と比較し全く別の遺伝子異常のプロファイルを持っている可能性が示唆された。近年WHO分類においてはIDH変異の有無で神経膠腫を2つに分類することが提唱されているが、さらにTERT変異を加えることで、4型に分類することが正確な神経膠腫の分子診断に有用である可能性が示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Neurooncol Adv.
巻: 2 ページ: 114
10.1093/noajnl/vdaa114.
Journal of Neuro-Oncology
巻: 146 ページ: 489-499
10.1007/s11060-019-03381-y