研究実績の概要 |
上皮間葉転換(Epithelial mesenchymal transition;EMT)は、上皮細胞がより運動性の高い間葉系細胞にダイナミックに形質変化する現象で、癌細胞の浸潤や転移への関与が明らかとなっているものの、グリオーマにおいては、詳細な解析がなされていない。そこで、今回は、細胞環境を調節するEMT転写因子のグリオーマにおける関与を検討した。ヒトグリオーマ細胞株 (A172, KG1C, T98G, U251, U87)とマウスグリオーマ細胞株 (GL261)を用い、EMT転写因子ZEB1およびZEB2の発現を定量的PCR及びウエスタンブロット法により検討した。次に、T98G、U251、GL261細胞株を用いてZEB1 and/or ZEB2のsi RNAノックダウン細胞を作成し、transmigration assay (TMA) にて浸潤能をコントロールと比較した。U87 siRNAによるZEB1/ZEB2のダブルノックダウン細胞を作成後、BALB/cAJcl miceの頭蓋内に細胞を移植して、生存期間をカプランマイヤー法でコントロール群と比較した。 ZEB1とZEB2双方のmRNAと蛋白レベルがヒト及びマウスグリオーマのすべての細胞株で高発現していた。TMAでは、ZEB1かZEB2単独のノックダウンでは、10~50 %程度の浸潤抑制能を示すのみであったが、両者のノックダウンにより最大約90%の相乗的な抑制効果が示された (P<0.01)。ヌードマウスにおける頭蓋内移植実験では、コントロール群に比べてZEB1/2ダブルノックダウン細胞群で、生存期間が長い傾向を認めたが、有意差を認めなかった(P=0.2 )。
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