研究課題/領域番号 |
17K10861
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山崎 友裕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (40781050)
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研究分担者 |
難波 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60198405)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自殺遺伝子幹細胞療法 / HSVtk遺伝子 / PET |
研究実績の概要 |
単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子導入Muse細胞(Muse-tk細胞)を用いた自殺遺伝子幹細胞療法に関するin vitroバイスタンダー効果、遊走能、in vivoバイスタンダー効果、遊走能、またMuse-tk細胞を脳内移植後100日間腫瘍形成が無いことを示した安全性確認実験の結果を論文化しpublishされた。本研究成果により間葉系幹細胞の特徴を有するMuse細胞がHSVtk遺伝子導入幹細胞として臨床応用実現可能性の高い幹細胞であることが示された。臨床応用を視野に入れた場合、移植後のMuse-tk細胞の腫瘍内分布をモニターすることはGCVの投与期間を決める上で重要な情報である。そこでPETを用いたMuse-tk細胞の生体モニタリングの開発のためPET分子プローブとして9-(4-[18F]fluoro-3-hydroxy methylbutyl)guanine(18F-FHBG)を作成した。予備実験としてマウスヌードマウス脳内にHSVtk遺伝子導入U87ヒトグリオーマ細胞を当該細胞数移植し小動物用PETにてイメージングを実施したところ検出に至らなかった。原因として作成した18F-FHBGが血液脳関門を通過できなかった可能性があり、現在他の分子プローブの作成も視野に入れている。他の原因として、PETの検出感度に達しなかった可能性があり、移植細胞数を増やすべく、使用する実験動物をラットに変更し実験を進める計画である。ラットに変更した場合、使用するHSVtk導入幹細胞数が非常に多くなる。供給可能なMuse-tk細胞数限りがあるため、現在他のHSVtk遺伝子導入幹細胞も作成しており、検出できる細胞数が確認できたところで引き続きMise-tk細胞を用いた実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作成した18F-FHBG分子プローブのHSVtk反応性については問題なきことを確認している。予備実験で使用したHSVtk遺伝子導入U87ヒトグリオーマ細胞についてはガンシクロビル(GCV)反応性が良好であり、予備実験で使用した材料に関しては問題ないことを確認できている。考えられる問題点としては18F-FHBGが血液脳関門を越えずPETにて検出されない可能性があげられ、他の核酸類似化合物で検討を開始している。またHSVtk遺伝子発現細胞の移植数を最大限まで増やしてみたが、マウス脳に移植できる細胞数には限りがあり、マウス脳内に移植できるHSVtk遺伝子発現細胞数ではPETの検出感度に達しないことが考えられ、実験動物としてラットを用いるべく準備を行っている。本理由の為進捗状況としては当初の計画と比べてやや遅れているが、ここまで得られたデータは重要な知見であり、本研究を完遂すべく、引き続き検証を続けて行く所存である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、HSVtk遺伝子発現細胞のPETによる検出を実現すべく、他の核酸類似化合物の作成と実験動物としてラットを用いる実験を進める。ここまでの実験は過去の報告を踏襲した内容であり、実現可能性は高いと考える。また当初の計画通り、2年目以降に実施する計画であった実験を並行して進める。本年は患者由来悪性グリオーマ細胞株に対するin vitro、in vivoバイスタンダー効果並びに遊走能の検証を行い、実験の再現性の確認と共に、実臨床反応を反映した結果を得る計画となっている。つまり、実際に手術で採取した腫瘍組織から樹立した患者由来の悪性グリオーマ細胞株に対するバイスタンダー効果の検証を行い、またGCV投与のタイミング、投与量、投与期間を変えることにより効果の差異を検討していく。さらに、正常脳に対する本治療の毒性の検証をアポトーシスに着目し、in vitro・in vivo real-time画像解析と組織学的検討を行う。HSVtk/GCVシステムはDNAポリメラーゼ阻害によるアポトーシスによる殺細胞効果を用いた治療法であり、原理的には分裂細胞のみにアポトーシスが起こるため正常組織を傷害しないと考えられるが詳細な検討はされていない。そこでMuse-tk細胞と市販の神経細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞を共培養し、ホスファチジルセリンに強い結合親和性をもつアネキシンA-5を蛍光色素標識した試薬を用いて、タイムラプスイメージングにて細胞レベルのアポトーシスの検出を行う。またin vivoの毒性の検証のため蛍光色素標識したMuse-tk細胞を脳内移植し、GCV投与中のアポトーシスをアネキシンA-5投与後に二光子励起顕微鏡でリアルタイムに細胞レベルでの観察を行う。また、各タイミングで切片を作成し、時系列に沿った組織学的検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)これまで概ね研究計画に沿った実験が行われており、実験遂行者の中で大学院生の実験手技のrunning curveの上昇に伴い、ピペットやmediumの使用量が当初の計画より減少したため。 (使用計画)当初計画していたPETプローブである18F-FHBGに加えて、他の核酸類似化合物で検討しており、プローブの作成費用に充当する。またラットを用いた実験を行う計画が進んでおり、ラットの購入費と飼育費用に充当する予定である。
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