研究実績の概要 |
播種、転移を起こす膠芽腫ではmiR-7,miR-29b, miR-34a, miR-101, miR-124, miR-128a, miR-137, mR-218の著明な低下を認めた。そして、それぞれのmiRのmimicをGBM細胞に導入すると、invasion assay, migration assay, wound healing assayにて細胞の移動、浸潤能が低下し、細胞周期のFACS解析ではG1期の細胞増加、S,G2/M期の低下を認め、細胞増殖能の低下を認めた。これらマイクロRNAのターゲット分子としてSTC1が同定され、培養液中のSTC1を測定すると、miR-29b, miR-341, miR-137, miR-101で低下していることが明らかとなった。また、その反対のmiR inhibitorでは上昇していた。STC1をノックダウンすると、U87 gliom細胞の浸潤能が低下した。また、低酸素状態(O2 1.5%)とした場合、通常培養の場合と比較して4~6倍のSTC1のmRNA発現量の上昇を認めた。また、髄液を用いてSTC1の濃度を測定すると、grade IVの 膠芽腫では濃度が高く、grade IIやgrade Iでは濃度が低く、悪性度とSTC1濃度は相関することが明らかとなった。一方、STC2の発現については、播種・転移を起こしている膠芽腫組織と起こしていない膠芽腫組織での発現に差は認めなかった。一方、低酸素状態にするとSTC2も発現が上昇しており、低酸素にてSTC1, STC2とも発現が上昇するが、STC1は膠芽腫関連miRによって制御され、組織中のSTC1発現上昇が転移、播種に関連するものと考えられた。
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